里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川新書)

  • KADOKAWA (2013年7月11日発売)
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この本は都会の近代的な生活を捨てて、山で本来の暮らしをしましょう。と勧めている本ではない。
しかし、何もかもをお金で買おうとするのではなく、お金に依存しないサブシステムを構築し、いいとこどりをしてリスクヘッジを図る。
ひいては、その生活が豊かになっていくという考えだ。
東日本大震災の時に、今までの経済だと全く生活ができなくなる事を知った。
もし今後、それを上回る南海トラフ地震などが起きれば、大都会で生活する人の大部分が生きていくことはできないだろう。

内容は目から鱗だった為、いくつかの事例を紹介いたします。
・岡山県真庭市の銘建工業は世界でもトップクラスの木質バイオマス発電を行っている。製材で出る木くずを燃料として発電しているのだ。
24時間フルタイムで稼働し、1時間あたり2000キロワット。100万キロワットという原発に比べると、微々たる量に見えるかも知れないがそういうことではない。
銘建工業では電力を購入していない。すべてバイオマス発電によって賄っている。それだけで年間1億円の電気代が浮く。
余った電気を売る。それが年間5000万円の収益。今まで産廃に題していた木くずの処理費用が年間2億4000万円。
合わせて年間4億円程の利益が出ている。
・昔は「シェア」という言葉は市場占有率を表していた。今では「分かち合い」という意味で受け取められるようになっている。
・ヨーロッパでは木造高層建築が進んでいる。
CLTという技術の集成材により、9階建てのビルも木造で建築しているらしい。
しかし日本は建築基準法により、高層の木造建築を建てることはできない。
・日本と同様に資源の無い国オーストリアのギュッシングという町は、木質バイオマスのエネルギー自給率が72%を超えた。日本は0.3%。
・高齢者が家庭菜園で作り、自身で食べきれない野菜を施設に譲ってもらう。施設は域外から野菜を買っていた買っていたコストが減る。
高齢者は自分の作った野菜が役に立っているという生きがいを得られる。
さらに野菜の対価として地域通貨を渡す。その通貨で近所のレストランに行き食事をする。
そこには近所の老人が集まる為、みんなで話をし、つながりが得られる。

今まで自分が正しいと思ってきた、いや、正しいと思い込んでいたマネー資本主義が、「どうやら違った見方もあるぞ。」
と思わせてくれた一冊です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年10月30日
読了日 : 2013年10月27日
本棚登録日 : 2013年10月27日

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