生きるとは、自分の物語をつくること (新潮文庫)

  • 新潮社 (2011年2月28日発売)
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本棚登録 : 2251
感想 : 181

昔、ユングに興味があった時、河合さんの講演を聴きに行ったことがある。
ユーモアに溢れたとても面白い公演だった。
一番最後に、質問を受け付けていて、手を挙げた人がいた。
「どうしてこの道に入ろうかと思ったのか」という問いだった。
著作を読むと、動機について、教師をしていた時期に生徒の悩みを聞き、それを何とかしたいと思ったと、よく書かれてあった。
しかし、その時の答えはちょっと違っていた。
「何かこういう研究をしないと、自分がおかしくなってしまうのではないかと思った」と吐き出すように言われたのだった。
私もこんな闊達で明るい人が、どうして重く苦しい心の研究をしているのだろうと不思議に感じていたので、何となく得心がいったのをよく覚えている。
ご自分の中にも患者さんの抱えているものに匹敵する重い何かがあったのだろう。何かは知らないけど。
恐らく仕事を通してそれは浄化されるのだろう。

小川洋子さんの小説の世界を題材に、和やか、かつ刺激的。河合さんの最後の対談。
西洋人と日本人の倫理観の違いが興味深い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 対談
感想投稿日 : 2019年12月12日
読了日 : 2019年12月12日
本棚登録日 : 2019年12月12日

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