強い女性の話というのは、読んでいて実に気持ちのよいものです。
この時代の女性というと、それこそ『悪妻論(坂口安吾)』で言われるような「悲しい女房」として人生を終えられる方のほうが多かったことでしょう。今もなお、女性はそうすべきという硬い頭の方も居られますが、そんなんほっとけほっとけ。
やっと本題に入ります。この話は、反抗心と共に育ってきたような気丈なお嬢さんが、自分にふさわしい生き方を求めては家を飛び出し、連れ戻されては派手に喧嘩をし、それでも諦めずにまた飛び出す。まさに「あらくれ」者の話です。
お島さん(主人公)の口の回りっぷりは、読んでいて癖になります。鼻につかない感じがいいんですよね。暴れ出したらもう止まらないけど。
物語終盤、何人目かの夫と服屋を営んでいたお嶋さんは、一緒にやってきた職人たちを連れてその男の元を離れ、独立を試みようとします。この希望を残した終わりかたが、当時は新しかったんじゃないかな。☆お島の野望は、まだ始まったばかり――!
途中で体を壊される描写があり、てっきり婦人病かなにかだと思ってたんですが……そんなことってあるんですか?(詳細は本編で!)
文末の解説にあったのですが、先生が分類されている「自然主義」、それは本来、現実を「ありのままに受け入れた上での」作品であるが、この作品は現実に「反抗している」。その点において、徳田先生の文学的な立場は、けっこう曖昧なところにある、と。
この作品をめぐって、夏目先生ともいろいろあったみたいですね。先生御自身も、なかなかの「あらくれ」者ですこと。
- 感想投稿日 : 2018年11月9日
- 読了日 : 2018年11月2日
- 本棚登録日 : 2018年11月7日
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