NHKブックス別巻 思想地図 vol.5 特集・社会の批評

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レビュー : 16
制作 : 東浩紀  北田暁大 
showさん その他   読み終わった 

一番最後の菅原論文。

「若手だけ競争し、負担を負うという構造は、最も研究成果を出せる年代を潰し、研究全体の質と効率性を著しく損なわせるという意味で、社会の利益をも損なっている」(p403~404)

若手は就職のために実績を作らないといけないにもかかわらず、安定した身分もないし、場合によっては色々なプロジェクトにかかわらされて、じっくり研究に取り組めない。それに比して老齢の正規教員は、論文を投稿するメリットがないので研究をあまりしなくなる人がいる。しかも身分保障はされている。これじゃあ、若手はいい面の皮だし、使いつぶされて気がついたら就職が極めて難しい年齢になっちゃうよ、という話だと思う。

一般的には「そうだなあ」と思うけど、自分自身に置き換えて考えると「そうだなあ」と単純には思えないところもある。僕は〈プロジェクトにかかわらされて使いつぶされる〉位置に、まさに居ると思う。しかも、僕の師匠はあんまり研究然とした研究をしていない(本人にそう言うと、怒るだろうけど)。

でも僕は実はそのことにあまり怒りを覚えていない。というのも〈もしプロジェクトにかかわっていなかったら、ちゃんとした研究ができて、就職もできる〉とは思えないからだ。僕は研究がそれほど好きではなくて(嫌いじゃないけど)、すぐゴロゴロしたり映画を見たりしてしまう怠惰な人間である。だから、時間があったらあったで、大して何もしないと思う。でも、気持ちだけは焦って、精神的に追い詰められてしまうと思う。現に、博士課程にいたころの最後のほうから、助教になるまでは、そんな感じだった。そういうふうに思うので、まだ仕事があるほうがマシだし、その隙に論文を書いてるほうが、とりあえずまだ気が楽なのである。

と書くと、「お前はスポイルされている」と言われそうな気もするし、実際4年後「使いつぶされた」典型になるのかもしれない。でも、僕は4年後よりも、明日のご飯の心配のほうをしてしまう短期的視野しか持っていないのだ。研究者に全然向いてないんじゃないか、と前から思うけど、それ以上に他の仕事にも向いていないと思うので、やむをえず研究にしがみつかざるをえないのだ。

で、ここまでは自分の現状と照らし合わせた感想である。だからといって、就職はやっぱりしたいし、あんまり研究していない老齢の研究者には怒りを覚えることもある(ましてや定年延長なんて…)。いい研究をしてると評価されている人にはしかるべきポストが与えられるべきだし、ほとんど誰も就職できないような状況は、絶対に変えてほしい、変えないといけないと感じている。

そんなわけで、僕のなかの個別意思と一般意思がなんか奇妙に同居しているということを、論文を読んで感じたのだった。

レビュー投稿日
2012年5月10日
読了日
2012年6月24日
本棚登録日
2012年5月10日
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