ネオリベラリズムとは何か

  • 青土社 (2007年3月1日発売)
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この本では、1970年代のネオリベラリズムの背景に、1970年代石油価格の高騰で石油産出国が得た利益がアメリカの投資銀行に集まり、この資金を海外で投資できる状況を作るための国際債券・金融市場の自由化だったことを挙げている。その金はメキシコなどラテン・アメリカなどに向けられたが、この投資の多くは債務不履行に陥り、要は失敗に終わった。

ところが、この「ツケ」をアメリカはなんと投資の対象国自身に振り向けた。IMFとアメリカ財務省の力を併せて、貸し付けられた国(メキシコなど)は、借金の返済を延期してもらうかわりに、福祉予算の削減や労働法制の緩和と民営化を行わせたのである。とはいえ、この「債務を相手国に押しつける」という離れ業がいったいどうやって実現できたのか、この本では詳しく書かれていないのが残念だけど。

また、一部の「成功」現象によって、ネオリベラリズムが全般的には失敗していた事実が隠蔽されたという。上流階級がメディアを握っているので、「失敗した領域は競争力が足りなかったのだ、という神話がまきちらされ、それによってさらなるネオリベ改革の素地が作られた」(p.49)という。「イデオロギーに染まった言明が押しつけられ、いろいろな場所で危機が頻発することによって、構造的な問題が隠蔽されてきた」(p.50)

それにしても、どうして日本ではハーヴェイ的な意見が通らず、ネオリベラリズム的な「イデオロギーに染まった言明」を言う奴が人気があるんだろうか。そのことが不思議でならない。それを解明することが、戦後日本史の最大の課題なんじゃないか。マジで。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会科学
感想投稿日 : 2014年12月26日
読了日 : -
本棚登録日 : 2014年12月26日

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