
「私たちは、自然の流れの前に跪(ひざまず)く以外に、そして生命のありようをただ記述する以外に、なすすべはないのである」(エピローグより)
センス・オブ・ワンダー。その言葉がこの本に一番似合う。作者と、そして幾多の生物学者たちが丹精を尽くした奇跡と、そこから生まれる美しい発見がドキュメンタリーとしてまとめられている。とても内容の濃いNHKスペシャルという感じ。真理に触れたような、まぶしい読書体験だった。
常に「新陳代謝」する。それこそが生命であり、生きるということ。だとすれば、その集合体である地球という巨大な生命も代謝こそが要であり、その中間レイヤーに位置する人間社会という生命も代謝が要なのかもしれない。
なんて、自分ゴト化するように拡大解釈してみたけど、そもそも社会なんていうシステム自体もひと時の現象であり取るに足らないことだとも思えて、自分の生きる軸をどこに設定するかを考えさせられる。とある先輩が将来の夢を「地球と一体化すること」と語っていたのを思い出す。
以下は気づきmemo
なぜDNAは二重らせん構造なのか?それはA=T、C=Gという4つの文字が凹凸関係になっていて、どこか片方が欠けても対関係から修復できるし、かつ二重らせんがそれぞれ分かれて自己複製できるためなのだ。
なぜ原子はこんなにも小さくなくちゃいけなかったのか?それは拡散という物理現象おいて粒子が多ければ多いほど秩序の精度を高めることができるから。だから原子はこんなに小さい、つまり生命はこんなに大きい必要があったのだ。
生命はなぜ代謝を繰り返すのか?「エントロピー(乱雑さ)増大という物理法則は容赦なく生体を構成する成分に降りかかり、高分子は参加され分解され、集合体は離散し、反応は乱れる」だからこそ「やがて崩壊する構成成分をあえて先回りして分解し、乱雑さが蓄積する前に再構築を行う」つまり「エントロピー増大の法則に抗う唯一の方法は、システムの耐久性を強化することではなく、その仕組み自体を流れの中に置くことなのである」。それこそが「動的平衡」ということ。
なぜ生命は絶え間なく壊されながらももとの平衡を維持できるのか?それはジグソーパズルのピースのように相補性を持っており、新しく生まれたピースは必ず収まるべき場所が決定しているのだ。
- レビュー投稿日
- 2020年5月11日
- 読了日
- 2020年5月10日
- 本棚登録日
- 2020年5月10日
『生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)』のレビューへのコメント
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