明治時代を舞台とした恋愛。御家人だった主人公「雨竜千吉」が、明治維新で、叔父がてがける商社の仕事に入る。江戸の頃、よく致知が出入りしていた物産問屋で好きな女性「お順」がいた。外国人も出入りするため、お順は英語が話せた。
あこがれとも、負けん気ともつかない気持ちで、英語を学んだ千吉。その力を多少見込まれ、叔父の商社の函館支店へ。英語を使う機会もないし、新しいものに出会うものもないと意気消沈していた千吉。そこで、多くの人に出会う。宣教師・ジャン・フィリップ、通詞(通訳)・財前卯之吉。財前卯之吉は実在の人物だという。函館では、地元の発展や教育に大きく貢献した人物らしい。
ちなみに、タイトルは”honesty”から、作者の名前「宇江佐真理」の苗字「宇江佐」は"weather”からとっているらしい。
財前卯之吉は、解説に実在の人物と書かれてあったが、もしかして他にもいるのではないかと思った。千吉を叔父の依頼で案内して、農業や牧場の指導をしたという設定になっている「アルフレッド・ドーン」にあたりを付けた。当時、お雇い外国人ということで、イギリス、ドイツ、フランス、アメリカなどから西洋技術を伝える外国人を官費で多く雇った。そのうちのひとりの中にいるのではないかと思った。しらべてみると、なるほど、該当しそうな人がいた。それは、「エドウィン・ダン」。オハイオ州出身、北海道で指導など、重なる部分がある。
紆余曲折を経てお順と一緒になる千吉。その紆余曲折を、明治の息吹をうまく織り込みながら書かれているのはとても面白かった。明治を舞台にした小説が少ないので、新鮮だった。
- 感想投稿日 : 2010年12月25日
- 読了日 : 2010年12月25日
- 本棚登録日 : 2010年12月25日
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