科学の考え方・学び方 (岩波ジュニア新書)

  • 岩波書店 (1996年6月20日発売)
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良書 科学と倫理の関係を、青少年に分かりやすく解説した書です。

阪神淡路大震災、オウム真理教、もんじゅ。科学そのものは万能ではなく、私たちが意外にもろい基盤の上に生きていることを、これらの事件がはっきり示していたからです。
科学の使い方を誤れば、人を平気で殺し、はては、人類を滅ぼしてしまいかねないことに人々は気がついています。
未来は「科学の知」にかかっている。
一つ一つの問題を、あらゆる角度から検討する必要があります。

気になったことは以下です。

・研究者には大まかに分けて、2通りのタイプがある。
 「微分型」:問題の詳細を突き詰めて考え、すぐれたテクニックで解決していくタイプです。
 「積分型」:問題をより広い観点から見渡して、進むべき方向や全体の整合性を考えるタイプです。
 微分型は、虫の目、積分型は、鳥の目といえるかもしれません。

・自然科学には、2つの方法があります。
 帰納的方法:現象や対象そのものに興味をもって観測・観察・実験しそこから共通性や規則性を発見していく方法
 演繹的方法:基本的な原理や法則を推論し、具体的な現象や対象に適用してそれを理解する方法

・科学という仕事は、本質的に、「積み上げ」式だといえるでしょう。過去の研究者の成果をもとにして、それを深め、発展させていくわけです。

・科学の構造とは、現象⇒物質の運動⇒法則 でしょうか。

・科学である限り、どの分野でも考え方や攻め方は共通しています。科学は一定構造のをもっているのです。

・観察をより一歩進めたのが、観測です。自然が引き起こす現象を性質をくわしく見るだけでなく、「測る」、つまり何らかの尺度を用いて性質を数値に置き換えるのです。

・物質という実体にはたらきかけ、そこで発見された結果が、誰によっても実証ができるいう、科学の客観性を保証しているのが実験なのです。

・物理法則の構造 原理・仮説 ⇒ 法則 ⇒ 保存則

・科学の方法 実験

・一般にモデルには、2種類あって、
 実在モデル:実際の現象を再現するよう物質を組み立てたもの
 分析モデル:現象を理解しやすいよう法則を単純化したもの

・数学は科学のことば 物理法則は、すべて数学を用いて書かれています。数学は言語のように国ごとに変わることがありません。

・イギリス王立協会がはじめた重要なこととは、論文発表のルールを確立したことです。

・現代科学が不得手な問題 カオスとフラクタル

・いままで解けなかった非線形問題を、コンピュータを使って、数値的に解くことができるようになった。

・バタフライ効果 ほんのささいな空気の変化がいずれ、大変動をおこすこと

・フタクタル現象:物理量の間の関数が、ベキで表されること。複雑な相互作用の結果、大から小までさまざまなスケールの現象が混じっているので何が問題なのかがわかりにくい。

・奇妙なアトラクターという現象を通じて、カオス運動と、フラクタル概念が結びついている。

・技術の方法の多様性:科学の原理や法則は1つでも、技術化の方法は複数あるというもの
 つまり、技術は、その科学的な合理性だけでなく、社会との関係の中で選ばれるので、社会の変化に応じて技術の内容も変化するはず。しかし、長い目でみて正しいのかどうかを考える必要がある。

・科学は仮説にすぎない。科学にかかわることで「絶対」はないのです。私たちは、まだ自然現象の一部分しか理解しておらず、未知の部分があるかぎり、「絶対安全」などと、「絶対」に言えないはずです。

・科学は技術を通じて社会と、そして人間と強く結びついています。科学は使い方次第で、人を活かしも、殺しもできる恐ろしい力をもっているのです。

・現在生じてる環境問題などの地球上の矛盾は、結局科学の力で解決するしかないと考えており、真に科学の力を発揮するためには、科学者がしっかりした倫理を持つべきです。

・カオスやフラクタルなど、まだまだ解かれていない謎が周辺に溢れています。新しい手法で研究すべき身近な現象は多くあります。これを私は、「等身大の科学」と呼んでいます。

・技術の真の価値を利用するには、それを使う人間の技術レベルも上げなければなりません。そのためには、技術の内容を理解し、論理的な思考や全体のつながりを把握する力を持ってなければなりません。

・未来を担う君たちへ。科学の第一線でどのような研究が行われているのかを、やさしく書かれた本で読むのも楽しいと思います。科学に新しい風を吹き込み、転回の時代をよりいっそう大きく展開させるのは未来を担う君たちです。(結論)

目次

はじめに
1 私にとっての科学
2 科学の考え方
3 科学はどのように生まれたのか
4 現代の科学と科学者を考える
5 21世紀の科学と人間
6 未来を担う君たちへ
付録
あとがき

ISBN:9784005002726
出版社:岩波書店
判型:新書(岩波ジュニア新書 272)
ページ数:208ページ
定価:840円(本体)
発売日:2017年05月25日第31刷

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カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年7月6日
本棚登録日 : 2023年7月5日

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