里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く
著:藻谷 浩介
著:NHK広島取材班
角川新書 D-67
ところとびとびになっているが、分かりやすかったです
本旨は、20世紀を象徴する、「マネー資本主義」に対して、過疎地から、あたらしいスマートな、「里山資本主義」を立ち上げようです
ふんだんに手にする木材がなぜ地域の豊さとつながっていないのか という問いから始まった
気になったのは、以下です
■里山資本主義の原資
1.木質バイオマス発電
中国地方の山間部から、里山資本主義は誕生した
①製材所でもてあましていた、木くずをつかって、「木質バイオマス発電」を行うこと
②製材所の電力を100%まかなう
③夜間は、その電力を電力会社に売電する
効果
②製材所電力 100,000,000
③売電 50,000,000
①廃材処分費 240,000,000
合計 390,000,000
2.木くずを加工
かんなくず、などを、直径6mm長さ20mm の木製ペレットを作成
ペレットボイラーを導入
⇒トマトのハウス栽培などの燃料節約に活用
3.CLTパネル 地震にもつよい、直角に張り合わせた合板
ヨーロッパでは認知がすすんでいるが、鉄筋コンクリート神話がある日本では、普及途上
■里山資本主義の先進国:オーストリア
・木の徹底利用で、経済の自立を目指す
・オイルショックや、フクシマなどで、石油、原子力は価格変動、リスクが高い
なんとなれば、木材をつかったエネルギー革命だ、打倒化石燃料
・背景には、自動車部品メーカーが集積する高度技術を有していること、つまり、技術に強い
・森林マイスター:森を持つなら、手入れをしっかり行わなければならない、それがオーストリア林業の哲学
・オーストリアは、脱原発を憲法に明記している国家である
■マネー資本主義vs里山資本主義
・20世紀の象徴である、マネー資本主義は、重厚長大産業を基盤として、莫大な投資、労働力の集約が必要な資本主義、このために、国家主導で、推進せざるをえなかった
・里山資本主義は、自己完結型の経済、地域復権の時代の象徴である
里山資本主義は、マネー資本主義に対立するものではなく、補完するものである
マネー資本主義にとなりに、サブシステムとして、里山資本主義も構築しておいたほうという感である
・里山資本主義は、マネー資本主義のアンチテーゼ
①貨幣換算できない物々交換の復権
②規模の利益への抵抗
③分業原理への異議申し立て
■グローバル経済からの奴隷解放
・過疎の島こそ、21世紀のフロンティアである
・1次産業へ帰着する若者、IT産業の倍以上である
・ニューノーマル消費:自分たちのための消費ではなく、人とのつながりのための消費
所有価値から使用価値へ
・オールドノーマル消費は、成長が是
・グローバル時代は、強い者しか生き残れないという、誤解
・耕作放棄地で、農業を行う
・スーパーなどでの野菜の購入ではなく、耕作放棄地で野菜を作れば、買う必要はない
・過疎を逆手にとる
■スマートシティ
・巨大発電所がもたらす膨大な電力を有する旧型の都市ではなく、町中や、近隣で作りだされる小口の電力を効率的に消費し、自立する21世紀型の新都市モデルを、スマートシティという
・都市:スマートシティ + 農村:里山資本主義 が、車の両輪となる
・天災に対応できるのは、里山資本主義
・マネー資本主義を運用しつつ、里山資本主義を、保険として、安心感として、準備する
・高齢化しているから日本はだめだと言う論理ではなく、里山資本主義で、非貨幣価値を拡大させることで吸収する
目次
はじめに 「里山資本主義」のススメ
第1章 世界経済の最先端、中国山地―原価ゼロ円からの経済再生、地域復活
第2章 二一世紀先進国はオーストリア―ユーロ危機と無縁だった国の秘密
中間総括 「里山資本主義」の極意―マネーに依存しないサブシステム
第3章 グローバル経済からの奴隷解放―費用と人手をかけた田舎の商売の成功
第4章 “無縁社会”の克服―福祉先進国も学ぶ“過疎の町”の知恵
第5章 「マッチョな二〇世紀」から「しなやかな二一世紀」へ―課題先進国を救う里山モデル
最終総括 「里山資本主義」で不安・不満・不信に訣別を―日本の本当の危機・少子化への解決策
おわりに 里山資本主義の爽やかな風が吹き抜ける、二〇六〇年の日本
あとがき
ISBN:9784041105122
。出版社:KADOKAWA
。判型:新書
。ページ数:312ページ
。定価:940円(本体)
2013年07月10日初版発行
2013年09月20日4版発行
- 感想投稿日 : 2024年6月1日
- 本棚登録日 : 2024年5月29日
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