1920〜30年代、日本におけるサラリーマンの誕生の時代において次々に取り入れられていった、さまざまなオフィスの「機械(おもにOA機器)」を手がかりにモダンライフの表象文化を論じたのが本書である。登場する機械は、省線電車の自動開閉扉、タイムカード、カードボックス、ベルトコンベヤー給仕装置、ファクシミリ、マイクロフィルムなどであるが、著者は欧米で発表された科学雑誌、啓蒙雑誌等々と日本におけるそれら紹介記事等を渉猟・紹介しつつ、「時代の空気」をよく再現し得ているように思われる。考察の一部を引用しておこう。
「一九二〇年代、東京と同じく、大衆の時代を迎えたベルリン。そのオフィス風景を探訪して、時代の考現学者ベンヤミンとクラカウアーは、カードボックスに刮目し、ひとしく黙考している。彼らの見立てでは、カード式索引システムが象徴的に開示しているのは、メディアとしての書物の形式が断片化し揺さぶられると同時に、近代的主体が機能的部分(原文傍点)へと解体されていくありさまである。ベルリンのオフィスは、人文主義的な人間観を震撼させていたのである。」(161−2ページ)
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本史
- 感想投稿日 : 2011年12月7日
- 読了日 : 2011年12月5日
- 本棚登録日 : 2011年3月29日
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