「消費者」という概念を「利益」「権利」「責任」という3つの観点から整理し、戦後日本経済史を見直すという非常に野心的な試みであり、面白く読んだ。
第1章「消費者主権の実現に向けて」ではは高度成長期、大量生産と大量消費によって「消費者の利益」が実現されると信じられていた時代を、ダイエーの中内や松下の経営哲学にも検討を加えつつ論じられている。個人的には生産性向上運動と「消費者主権」を結び付けて論じられている箇所(pp.21-35)がとくに興味深かった。
第2章「オルタナティブの模索と生活者」は石油危機後からバブル直前までの時期が扱われている。私は著者の満薗さんより20歳も年上なので、この時代の雰囲気がよくわかるし、著者の世代の研究者によってこのように整理されると確かになるほどと思う反面、「生活クラブ」や「大地を守る会」などのインパクトはそんなにあったのかなとも思う。むしろ個人的にはセゾンの行き方に非常な新しさを感じた世代である。
第3章「お客様の満足を求めて」と終章「顧客満足と日本経済」は十分に煮詰め切れていない部分もあるように感じたが、日米貿易摩擦に端を発する規制緩和と消費者利益の関係性の指摘などは鋭い。ところでヒーブなんていう言葉は20年ぶりに聞いた(私、前職が家政学部関係だったので)が、ACAP(今の本務校では提携講座を設置している)とかお客様相談室とも関連が深いことははじめて知った。
※浜野さんたちとの共著にも言及し、参考文献にもあげてくださり、ありがとうございます。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
経済史
- 感想投稿日 : 2025年2月26日
- 読了日 : 2025年2月26日
- 本棚登録日 : 2025年2月21日
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