国語専科教室を主催する工藤順一氏による、子どもの論理力を引き出す実践と論理を説いた新書。第一章で現実と事実(第一次資料)からことばを立ち上げる実践プログラム、第二章では活字情報(第二次情報)を読み取りまとめる実践プログラム、第三章では外に出て身体を使うワークショップ実践の紹介、そして第四~六章はそれぞれの実践の裏付けとなる理論を説く。
「読む・書く」の指導の一体化、混ざり合い螺旋的に能力を向上させ思考力を養うこと、それが筆者の目指す国語教育であり、私もその考えに強く賛同する。本書の記述からはまだ道半ばという印象を受けるが、国語教育に携わる者としては学べることは非常に多い。特に比較と論理の関係性は是非押さえておきたい。「論理」という漠然とした最重要能力、その正体を探るうえで「比較」は欠かせない観点であることに気づかせてくれた。また、「学校の教科書は雑誌に近い」という意見も、日頃から教科書に懐疑的でその扱い方と位置を決めあぐねている私には鮮烈なものだった。
まだまだ国語教育には答えもゴールも見つかっていない。そしてそれには絶対的な不変の解はない。教育は常に現実社会の形、子どもたちの現状に合わせて変わっていかなければならないからだ。しかし一方で不動の「芯」も必要。松尾芭蕉の理想とした「不易流行」がまさにこれに当てはまる。工藤氏は本書でその「不易」である国語教育の理論を押さえ、「流行」として更新し続けていくべき有効な手段を伝授してくれる。有機的な国語教育を目指す教師にとって、必携の書の一冊であると確信する。
- 感想投稿日 : 2017年5月19日
- 読了日 : 2017年4月1日
- 本棚登録日 : 2017年4月1日
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