1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2012年3月28日発売)
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いろんな比喩が物語に盛り込まれているけれど、どれも小難しさやまどろっこしい居丈高な感じはなく、ストレートに心に響く比喩のすべてを振りまいて、とびっきり親切な文章だと感じた。曰く、「人に理解させるには、とびっきりしんせつにならなくてはならない」(村上春樹談)。
これは、現代的孤独のエキソドスだ。命がけの飛躍。そういったものが必要な局面、非常に孤独な、そういった局面が、人生には必ずだれにでも用意されている。エキソドスは、なにもエジプトに限った話ではないのである。
命がけで飛躍したエキソドスの先になにが待っているか。希望、そういうものを、私が吹き込めるのか、自由、偽物でなく、ほんものの自由、そういうものを、私が手に入れられるのか。前者が天吾の望むこと、後者が青豆の望むもの。こういった対比で現代的エキソドスをあますところなく書いてくれる予感がする。
村上春樹は私にとって、感情や日常の、スーパーマーケットなのである。何度も言うけど。なんでもまとめ買いできる、便利なスーパー。これだから、これだけ支持されているのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2019年8月27日
読了日 : 2019年8月27日
本棚登録日 : 2019年8月27日

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