国王である父と共に、小さな別荘に幽閉されている盲目のレイア姫。優しい父が教えてくれる文字や言葉の知識と、読み聞かせてくれる古今東西の物語、熊のぬいぐるみのプゥとオーストラリアン・シルキー・テリアのダーク。恐ろしい侍女のダフネ。それらが彼女の生活の、世界の全てであった。やがて彼女が成長し、13歳になった頃、世界は歪み始め――。
著者の作品は初めて読んだが、とても面白かった。レイア姫が成長するまでの過程を描く「『レイア 一』」の章がとても美しい。言葉のセンスも、盲目のレイアが感じる色の描写も。
そして物語の中盤を過ぎてから明かされる真実。実はレイアが男の子なのではないか、ということには、「父」がズボンを買い与える場面で何となく気づき、「生理」の場面で決定的にわかっていた。言語が日本語で、実は舞台が日本であることも。そこまでわかれば誘拐の事実にも気づいてよさそうなのだが、その可能性にはあえて目を背けながら読んでしまった。それくらい美しい物語だった。
そして、本書の驚きはそれだけでは終わらない。実は「『レイア 一』」と「『レイア 二』」の章は怜が創作したストーリーだったと言うのだから。それを、誘拐犯と目した作家・原口孝夫に突きつける章で物語は終わる。だが、結局原口が犯人だったのかどうか、もしかしたら原口の言う通り怜の思い込みなのか、それがわからないまま終わるのにも圧倒させられた。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
服部まゆみ
- 感想投稿日 : 2013年6月2日
- 読了日 : 2013年6月2日
- 本棚登録日 : 2013年6月2日
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