反ナチとか反戦思想映画と見ると違うんじゃないでしょうか。もちろん、ナチズムを風刺していますが、この作品は、ジョジョという男の子が現実社会と直面することで、子供から大人に向かう通過儀礼を描いています。目をみはるのはタイカ・ワイティティ監督の間口の広さです。冒頭のナチの熱狂にビートルズの熱狂重ねてみたり、テント合宿の夜景のこの世のものと思えない美しさとか、自由を象徴するジョジョとエルサのダンスシーン、リルケの「生き続けよ 絶望は最後ではない」という詩句での感動を促す結び方、ただただ凄い、万人を惹きつける映画作りの才能でした。

2021年3月7日

読書状況 観終わった [2021年3月7日]

のっけから少女を見せないというのは悪魔的な超絶技巧です。怪しいのはいっぱい出てくるし、お陰で、信じるものが誰一人いなくなってしまいました。また、犯人がわかってからも、サイコな攻防戦が続き、最後の最後まで気が休まりません。映画史に残るようなサスペンスの傑作ですね。

2021年3月6日

読書状況 観終わった [2021年3月6日]

4人の学生仲間がバラバラで互いの胸の内も見えず友情のかけらも感じられない。ヒロインのボーイフレンドにも愛は感じられず、この5人が一緒にスウェーデンに行くのはとても居心地が悪い。かといって、カルト集団の金太郎飴のような均一感も気持ち悪い。監督は、この2つの世界を見せて、どっちの世界で暮らしたいか選ばせているのでしょうか。鬱だったダニーはカルト村に来て、笑顔になり、家族らしい絆を感じられたようです。それにしても、カルト村でのセックスシーン、あの状況で頑張れる男は凄い!そりゃ熊だって思いましたよ。

2021年3月5日

読書状況 観終わった [2021年3月5日]

広く律令期から江戸初期に至る様々な事例を紹介しています。戦国時代の雑兵は、満足な褒賞が出ないので、彼らの戦争目的は何と勝ち負けよりも「乱取り」にありました。乱取りとは、武器甲冑から女・子供に至るまで金目のものを鹵獲することです。武田信玄などの名だたる武将も、行軍を止めて乱取り休憩をしたり、占領地に在陣して鹵獲機会を与えるようです。女・子供は、人買い商人がいて、労役や風俗に供されます。残念ながら、本書は学術書ではなく、様々な文献を引用した読み物でした。この分野の研究が進むと日本の社会構造の変遷が見えてきます。良質な研究書が待たれます。

2021年3月5日

読書状況 読み終わった [2021年3月5日]

田舎と都会、セレブと最貧困、ストレートとLGBT、過去と現在、この作品は意図的に対立項を並べたてます。フラッシュバックのように見せるジョーの過去は気になりますね。親に見放され、溺愛してくれた祖母からも放置され、最愛の恋人とは悲惨なレイプ事件を体験しています。これらが故郷を捨てた動機でしょう。酷寒のNYで身を寄せ合うように寒さを凌ぐジョーとリコには奇妙な友情が生まれます。懸命に働いても僅かな稼ぎしかなかったイタリア移民の父を見て育ったリコは暖かいフロリダに楽園を見ます。天国と地獄。フロリダの地を踏むことなくリコは逝きますが、カーボーイ姿を捨てて地道に働くことを決めたジョーはリコのお陰で人間不信というトラウマからは解放されたようです。

2021年3月4日

読書状況 観終わった [2021年3月4日]

メイクピースという女の子の10才から15才までの冒険・成長物語。旧家の血を引くヒロインは魂を支配されるというオカルト的な因襲から逃れるため、知恵を絞って城を抜け出しますが、城の外でも社会は激動の時を迎えていました。戦火を駆け抜け、追手を退け、幸せを手に入れることができるのか。

舞台は1638~1643年の英国。広義の清教徒革命(1639~1660)の前期にあたります。大航海時代の影響でインフレが進み、地租収入に頼る王室の財政は逼迫。英国のチャールズ1世も同様ですが、議会の反対で予算が取れず、また、チャールズのKYや王権を制限したい思惑が交錯し、生じた王党派vs議会派の対立は、ピューリタリズムの影響を受け民衆を巻き込む内乱状態になります。この時代背景を頭に入れて読みます。

魂に別人格を入れてキャラ変したり、自分の内面で対話したりするのは趣向ですね。なかなかのアドベンチャーで面白いのですが、前作「嘘の木」には、加えて、「宗教vs科学」という対立軸があり物語の深みがありました。欲を言えば、もう一工夫欲しかったという気がします。

2021年3月3日

読書状況 読み終わった [2021年3月3日]

物哀しくて美しい。「満島ひかり×江戸川乱歩2」を見ていたら、短編「何者」のオープニングとエンディングに流れた曲のことです。調べると仏映画「軽蔑」のテーマ曲でした。僅か2分半ほどなのに、とても心に沁みます。音響の方は、きっと、どこか使う機会を待ってましたね。せっかくなのでブリジット・バルドーの映像に流れる、この曲を聴いてみたくなりました。

2021年3月3日

読書状況 聴き終わった [2021年3月3日]

グローブ座が焼失したシェイクスピアは49歳で筆を置く。20年ぶりに帰った故郷では、妻や二人の娘たちとの間には大きて深い溝が生まれていた。娘たちの醜聞を乗り越え、夭折した息子の真実を受け止め、家族の絆を取り戻していく。享年52歳、故郷に帰っても多忙なシェイクスピアでした。四季の風景が絵画のように美しく、ロウソクの灯りで暮らす室内はレンブラントの作品を彷彿させます。主演と監督をこなすケネス・ブラナーと作曲家パトリック・ドイルとは何度も一緒に仕事してきた仲間。エンディングの曲が美しい。

2021年3月2日

読書状況 観終わった [2021年3月2日]

「スターバト・マーテル」は十字架で死にゆく吾が子の傍らに立つマリアの哀傷を歌うものです。ボッケリーニは得意の弦楽五重奏にソプラノを加えて、美しくも切ない名曲を作りました。ボッケリーニはチェロのヴィルトゥオーゾですが、このアルバムでは、チェロ奏者でもあったサンドリーヌ・ピオーが澄み切ったソプラノで哀切なるも清浄な世界を現出させてています。

2021年3月2日

読書状況 聴き終わった [2021年3月2日]

ただただ、圧倒されるのはケイト・ブランシェットの非凡な演技力です。当然、「欲望という名の電車」でアカデミー主演女優賞を獲得したビビアン・リーを意識したでしょうが、板についたセレブ妻から精神を病んでいく姿まで、さすがの演技で彼女も同賞を受賞しています。

2021年3月1日

読書状況 観終わった [2021年3月1日]

デビュー35周年記念セルフカバーアルバム。ボーカルが前方中央に定位して、目の前で歌ってくれているよう。表現力が深化しています。2枚組でオリジナルバージョンと2021年バージョンを聴き比べられます。「AXIA~かなしいことり~」を今聴くと、小悪魔と美魔女の斉藤由貴がいます。

2021年3月1日

読書状況 聴き終わった [2021年3月1日]

ギャツビーくん、せっかくのニューヨークでのデートがすれ違いになったけど、自分を見つめ直すいい一日になりましたね。顔はいいけど、おつむが弱い女子大生をダコタ・ファニングが好演。セレブでないと行かないようなホテルやレストラン、バーなどニューヨークの洗練された都会美を見せて頂きました。

2021年2月27日

読書状況 観終わった [2021年2月27日]

全5巻、一日一冊のペースで一気読みしました。これだけの傑作が50年近くも前に描かれていたことを知りませんでした。しかも、執筆当時、萩尾望都さんは弱冠23歳。若くして、豊かなバックグラウンドがあり、骨太で、哲学的なテーマを持つ作品をミステリアスかつ耽美的に描くなんて!ジーニアス!マザーグースはもとより、旧約聖書詩篇のからの1節を引いたりします。「メリーベルと銀のばら」はリヒャルト・シュトラウスのオペラ「ばらの騎士」のイメージが共鳴します。目眩く提示されるモチーフのひとつひとつからも沼にハマります。執筆を再開されたようなので、(伏線の未回収もあると思うので)続けて読ませていただきます。

2021年2月27日

読書状況 読み終わった [2021年2月27日]

妊娠したと告げる黒人のミルドレッドに良かったと答える白人のリチャード。そして、プロポーズ。普通なら心温まるエピソードなのに、見ていて不穏で落ち着かなくなります。異人種間の婚姻を禁ずる法、この是非を巡る法廷闘争を起こしたラビング夫妻の物語です。夫は寡黙で真面目、誠実ですが、知的ではありません。白人女性からは相手にされない男かもしれません。妻は思慮深く夫を立てますが、写真を見ても優れた知性を感じます。死ぬ間際も夫への愛を口にするミルドレッドであり、伴侶に不満はないのですが、彼女に夫を選ぶ選択肢が限られていたのも事実です。僅か50年ほど前、アメリカで起こった実話です。

2021年2月25日

読書状況 観終わった [2021年2月25日]

週末に「ポーの一族」を観るので、原作を読み始める。BGMに流したのはショーソンの隠れた傑作「コンセールニ長調 Op.21」リリカルでメランコリックな曲調でよくマッチします。特に、アランが詩篇19の一節を発する名シーンとのシンクロぶりに感激しました。ジャケットがナビ派のドニの作品というのもセンスがいい♪

2021年2月23日

読書状況 聴き終わった [2021年2月23日]

唐揚げ店が繁盛し出したところから、物語に勢いがついて、最後まで面白い。このメンバーでパート2も作れそう。

2021年2月22日

読書状況 観終わった [2021年2月22日]

中国は、モンゴルに始まり、チベット、ウィグルと一貫して少数民族の言語や文化を破壊し洗脳・虐殺を続けています。根底には漢族の選民意識があります。他民族を同じ人間と見做さない選民思想はナチズムと変わりません。本書はモンゴルで行われたジェノサイドを告発していますが、チベットやウィグルの惨状と寸分変わりません。国際社会がナチズムを否定するなら、この惨劇を止めるべきです。放っておけば、満州族や朝鮮族も同じ目に遭うのでしょう。内政問題ではなく、植民地でジェノサイドが行われているのです。

2021年2月22日

読書状況 読み終わった [2021年2月22日]

ステップフォードの妻を見ていると、人気ドラマ「奥様は魔女」を思い出します。あの頃の妻、ファッション、家庭はアメリカ人の理想なのですね。でも、完璧な妻がいると、男は他の女性に刺激を求めたりするものですよ。と思っていると更に究極の理想の世界があったのですか。でも、それほど意外なシナリオに思えない。正気に戻った妻が夫を許すなんて甘い甘い。ニコール・キッドマンがタイプではないので、見所の乏しい作品でした。

2021年2月22日

読書状況 観終わった [2021年2月22日]

高校生の男女とおじいさんには、皆、居場所がなく、居心地の悪い毎日を過ごしています。4時間の長尺映画ですが、その分というか3人には作り物ではない実在感がありました。女子高生にはちょっと秋吉久美子の雰囲気がありますね。逆に、銃で死ぬ友人は作り物です。チンピラも狂言回しのように見えました。それぞれに事件があって、3人は満州里の動物園にいる象を見に行こうとします。思ったとおり、最後まで象は見せません。これは暗喩で、もちろんそこにも居場所はないのでしょう。中国の格差社会下流層も生きづらく、しわ寄せは若者や年寄りに及んでいます。一方で、中国人の勝手な理屈や自己主張の強さには辟易しました。才能豊かな監督の夭逝を惜しみます。

2021年2月21日

読書状況 観終わった [2021年2月21日]

埼玉の一ノ宮である大宮氷川神社と氷川女體神社の起源と変遷。こういう切り口は正史にはない歴史の諸相が知れます。今は羽振りの良い氷川神社も江戸期を通じて維持費の捻出には苦労が絶えず、富籤をしても売上不振でうまくいきません。また、吉田神道のバックを得て威光を高め、神社内寺院を追い出したりしています。従来、4柱を頂いていたものを明治政府が1柱にしたり、神主家を追い出して公家の神主を据えるなど明治の神社政策は強引で恣意的です。一方、氷川女體神社は縄文時代の水路の要衝に立ち、船の神様を神体としていること。見沼は御沼という聖地であり龍神信仰があることなど古代史に思いを馳せました。

2021年2月20日

読書状況 読み終わった [2021年2月20日]

若い労働者夫婦が非人間的な「一人っ子政策」によって人生を翻弄される物語。3時間余りの長尺作品にすることで、悲嘆やあがき、葛藤を丹念に見せている。上司の妹さんが思いやって心を痛めていたのは人間性を感じるエピソードでした。結局、夫婦関係が壊れず、養子も帰ってきたので、ホッとしました。ただ、養子がどこから来た子か、奥さんが遺書めいたものを残してぐったりしていたところはよくわからなかったですね。

2021年2月20日

読書状況 観終わった [2021年2月20日]

握るように挟んだタバコ。女優のように美しいショートヘアのお姐さんが婀娜な表情で遠くに視線を送っている。表紙は作者ルシア・ベルリンのポートレイトである。しびれる。

人生の断面を映像が浮かぶように切り取った掌編で、底辺や不道徳な暮らしぶりを描く背景にも洗練されたジャズが聞こえます。ヒロインの人生は波乱万丈ですが相当タフ。描く視線も不貞腐れなく、クール&ドライ。でも、愛する人を無くした表題作は絶唱でしたね。歯切れ良く、ソフィスティケートされた表現が魅力です。

彼女のデスパレートな日々を支えたのは込み上げて止まない表現欲でしょう。表現芸術として第一級であり、圧倒的。文学の愉悦を味わえます。それぞれの作品には刺さるフレーズがあり、中毒になります。「カキダシスト」「キリスト」でいうと快感を覚えるほどの「キリスト」です。編集がいいので、連作短編集のようでした。読み進むほどにルシアのサーガが浮かび上がってきます。本国では全部で43編のアンソロジーなので、後編が待たれます。原語なら何倍も楽しめそうな文体なのに、歯が立たないのは悔しい。

作者はすでに物故されていますが、ルシアという名に由来するように彼女の魂に光が降り注がれていることをお祈りします。

2021年2月18日

読書状況 読み終わった [2021年2月18日]

稀に見る傑作「掃除婦のための手引き書」の終盤あたりを読んでいるときに流しました。本書の表紙とも共通する色っぽいジャケがいい。流れる曲はハズレのない定番。都会的な演奏。

2021年2月18日

読書状況 聴き終わった [2021年2月18日]

17年にわたる男と女の腐れ縁の物語です。前半で男が渡世を語り、後半では女が渡世を語ります。渡世はキーワードであり、躍進する中国社会から取り残されて生きる生き様と重なります。男はダメンズで、女は男らしいくらいの気っぷの良さで、名シーンがいっぱいありました。この先も二人の縁は切れないのでしょうね。一人一人の人生は翻弄されるけど、悠久の時は何があっても着実に流れていく。中国映画は、一つの作品の中にミクロとマクロの対極の世界を並べて表現する稀有な才能があり、そこに魅力を感じます。

2021年2月16日

読書状況 観終わった [2021年2月16日]
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