もう幾冊とも読んだので、ヘッセの作品の傾向がさすがに掴めてきた。
けして恵まれてはいない環境に生まれた少年が見いだされ学校へ上がり、そこで芸術に目覚め、しかし大抵挫折し、真珠のように美しい友情を手にして、しかし精神的に満たされぬ思いから放浪し、放浪し、そして最後には真理を得る。
その主人公達は大抵が少し人嫌いで難しく、悩み深い、酒飲み。
もちろん多少の違いはあるにせよ、こういった傾向が強い。
これは描きやすいと言うよりもヘッセその人の人生の影響が強いんだろうと思う。
いわばこの人の作品のほとんどが自画像的な作品なのだ。
自分のある一面を切り出しそれを描く。作家なんてみんなそうだろう、と言う人もいるかもしれないが、ヘッセの場合そのニュアンスが強いというか、筋と言える様な物があまりないだけに精神、というか思想を支柱に置く作家なので特にそれを感じるんだろうな。
本作『郷愁』に関しては正直そこまで響く所はなかった。
どちらかと言えばいつか読んだような感覚を得た。ヘッセお得意の題材なのだ。ボピーのくだりが個人的には美しかったと思うが、ああ言った感動はやはり『知と愛』には及ぶまい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
洋才賢母
- 感想投稿日 : 2013年3月25日
- 読了日 : 2013年3月25日
- 本棚登録日 : 2013年3月25日
みんなの感想をみる