わからない

著者 :
  • 白水社 (2024年5月24日発売)
4.26
  • (12)
  • (11)
  • (3)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 729
感想 : 17

初めて岸本佐知子さんのエッセイを読んだのは
もう10年以上前なんですが
ずっと岸本葉子さんと同一人物と思っていました。

佐知子さんは光村図書ベストエッセイでも目立って面白い方で、
一人暮らしの日常を綴る葉子さんとは別の人
そう認識してから読んだのは今回初めてです。

佐知子さんがこの24年間あちこちに書いた文章で
単行本に収録されていないものの中から選んで
一冊の本にまとめたもの。

たくさん笑いました。
ありがとうございます。

せっかくだから一部紹介。

「もう一度読んでみた『銀の匙』」より

〈ここにきて若干焦っている。これまで取り上げてきた作品がすべて岩波書店の本であることに気づいてしまったからだ。こういう偏りはよくないのではないか。業界内での癒着を疑われはしまいか。
だかこれはある意味仕方のないことで、私は子供のころ、岩波フェチだった父に〈岩波フェチ養成ギブス〉を装着させられていたのだ。買い与えられる児童書も岩波、家の本棚も岩波文庫だらけとなれば、どうしたって子どものころに読む本の岩波指数は高くなる。しかしその後私は筒井康隆方面にかぶれてしまい、父のもくろみは未遂に終わった〉

もう一つサービス。

〈帰りの電車の中、一部の隙もないビジュアル系青年がやおら携帯を取り出し、「もしもし?あ俺、いま電話の中なんだけど」と言ったので、車内じゅうの人が吉本新喜劇のようにドタドタと倒れた〉

すみません、もう一つ、これで最後にするから許して。

〈金魚鉢のメダカも一匹死に、とうとう残り一匹となる。私の何がいけなかったのか。餌も正しくやったし水も替えたのに、なぜそう当てつけがましくバタバタと死ぬ。そっちがそう出るならこっちにも考えがある。残りの一匹にはもういっさい愛情をかけず、「なんだ、まだ生きてたのか」くらいの冷淡な気持ちで接し、名前も最悪な名をつけ、薄幸のメダカとして育てることを決意〉

ちなみにそのメダカ、その後けっこう長生きします。
そんなものなんだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ☆随筆・評論・対談・鼎談☆
感想投稿日 : 2024年6月7日
読了日 : 2024年6月7日
本棚登録日 : 2024年6月7日

みんなの感想をみる

ツイートする