思い出す事など 他七篇 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (1986年2月17日発売)
3.76
  • (16)
  • (18)
  • (32)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 315
感想 : 26
5

「思い出す事など」夏目漱石著、岩波文庫、1986.02.17
190p ¥210 C0195 (2020.12.31読了)(2020.12.24借入)(1990.04.05/7刷)
「思い出す事など」は、漱石が胃潰瘍のため生死を彷徨った前後のことを綴ったものです。
解説によれば、以下の通りです。
1910年6月、小説『門』を脱稿
その後、長与胃腸病院で診察を受け、胃潰瘍の治療のため入院
7月末日、退院
8月6日、温泉場で養生するため修善寺温泉菊屋に出かけた
7日昼ごろから異変の兆候あらわれる
17日、胃痙攣、胆汁と酸液の嘔吐という症状を経て「熊の胆のごとき」吐血をした
19日、鏡子夫人が駆けつける
24日、胃腸病院副院長杉本東造が来て診察、見立ては楽観的だった
診察後の夜8時ごろ、吐血500g、脳貧血を起こし一時人事不省、カンフル注射15本
三人の医師の奮闘により、漱石は危機を脱した
9月8日、日記をつけられるまでに快復
9月25日、起き直って食事をとることができるようになった
10月11日、東京の胃腸病院へ移動
10月20日ごろから、「思い出す事など」を書き始める
1911年2月26日、自宅へ戻る

【目次】
思い出す事など
長谷川君と余
子規の画
ケーベル先生
ケーベル先生の告別
戦争から来た行違い
変な音
三山居士
注解  古川久(編)
解説  竹盛天雄

●病気になって(68頁)
四十を越した男、自然に淘汰せられんとした男、さしたる過去を持たぬ男に、忙しい世が、これほどの手間と時間と親切を掛けてくれようとは夢にも待設けなかった余は、病に生き還ると共に、心に生き還った。余は病に謝した。また余のためにこれほどの手間と時間と親切を惜しまざる人びとに謝した。
●絵について(81頁)
画のうちでは彩色を使った南画が一番面白かった。
●職業について(92頁)
凡ての職業が職業として成立するためには、店に公平の灯を点けなければならない。公平という美しそうな徳義上の言葉を裏から言い直すと、機械的という醜い本体を有しているに過ぎない。
●ケーベル先生(129頁)
(余はケーベル先生に)西洋に帰りたくはありませんかと尋ねたら、それほど西洋が好いとは思わない、しかし日本には演奏会と芝居と図書館と画館がないのが困る、それだけが不便だといわれた。
(定年になって、都会から田舎に移った僕自身も似たような感じですね。映画館、美術館がないし、図書館はあっても蔵書が少ない。)

☆関連図書(既読)
「硝子戸の中」夏目漱石著、岩波文庫、1933.09.10
「三四郎」夏目漱石著、新潮文庫、1948.10.25
「それから」夏目漱石著、新潮文庫、1948.11.30
「門」夏目漱石著、新潮文庫、1948.11.25
「坊ちゃん」夏目漱石著、新潮文庫、1950.01.31
「明暗(上)」夏目漱石著、新潮文庫、1950.05.15
「明暗(下)」夏目漱石著、新潮文庫、1950.05.20
「虞美人草」夏目漱石著、新潮文庫、1951.10.25
「道草」夏目漱石著、新潮文庫、1951.11.28
「こころ」夏目漱石著、新潮文庫、1952.02.29
「倫敦塔・幻影の盾」夏目漱石著、新潮文庫、1952.07.10
「行人」夏目漱石著、新潮文庫、1952..
「坑夫」夏目漱石著、角川文庫、1954.05.30
「草枕・二百十日」夏目漱石著、角川文庫、1955.08.10
「吾輩は猫である」夏目漱石著、旺文社文庫、1965.07.10
「彼岸過迄」夏目漱石著、岩波文庫、1939.11.29
「文鳥・夢十夜」夏目漱石著、新潮文庫、1976.07.30
「続 明暗」水村美苗著、筑摩書房、1990.09.
「漱石先生の手紙」出久根達郎著、NHK人間講座、2000.04.01
「夏目漱石『こころ』」姜尚中著、NHK出版、2013.04.01
「夏目漱石スペシャル」阿部公彦著、NHK出版、2019.03.01
(2021年1月8日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
明治43年の盛夏、漱石は保養先の修善寺で胃潰瘍の悪化から血を吐いて人事不省に陥った。辛くも生還しえた悦びをかみしめつつこの大患前後の体験と思索を記録したのが表題作である。他に二葉亭や子規との交友記など七篇。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 夏目漱石:作家
感想投稿日 : 2021年1月8日
読了日 : 2020年12月31日
本棚登録日 : 2020年12月28日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする