思い出袋 (岩波新書)

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本棚登録 : 330
レビュー : 41
著者 :
nakaizawaさん 随筆   読み終わった 

(2016.01.31読了)(2012.03.12購入)(2010.05.06・第2刷)
鶴見俊輔さん哲学者、2015年7月20日に、93歳で亡くなられました。
追悼を兼ねて、積読の山から探し出して、読みました。
鶴見さんの著作は、ほとんど読んでいないと思っていたのですが、既読リストを見ると、三冊ほど読んでいました。訳書を含めると四冊になります。
この本は、『図書』に2003年1月から2009年12月まで、7年間にわたって連載したものを一冊にまとめたもの、とのことです。
記憶の断片を少しずつつづったもので、同じ話が何度も出てきたりします。何度の出てくる話は、きっと思い出深いものなのでしょう。老人の思い出話に付き合ってみようと思われる方は、手に取ってみてください。
太平洋戦争が、始まったときは、アメリカに留学中で、日本に帰る船が出るというので、その船で帰ってきた。外国語ができたので、軍隊に入れられたときは、外国のニュースを聞いてその内容を新聞にして、軍隊内部の数人に、配布していた。
戦後は、『思想の科学』の発行に参加していた。
ベトナム戦争のときは、べ平連の運動に参加して、アメリカの脱走兵に手を貸す活動に加わっていた。
アメリカの黒人に対する選挙権は、法律上は、早くに認められたことになっているが、実際は、KKKなどにの妨害されて、行使できなかった。行使できるようになったのは、公民権運動などの成果によってである。
アメリカを外からの眼で見ることができるようになったのは、メキシコに滞在する機会が与えられた時である。この辺のことは、「グアダルーペの聖母」に書いてあったように思う。

【目次】
一 はりまぜ帖
二 ぼんやりした記憶
三 自分用の索引
四 使わなかった言葉
五 そのとき
六 戦中の日々
七 アメリカ 内と外から
書ききれなかったこと―結びにかえて
あとがき

●バルラッハ(30頁)
十七歳のころ、ニューヨークの図書館で働いていた。大学の夏休みは長いので、三ヵ月近く、一日おきくらいに近代美術館に通って、たくさんの作品にそれぞれなじみになった。その中にバルラッハの木彫があって、ひざをかかえ、眼をつぶって、歌を歌っていた。
(2006年に、芸大美術館で、バルラッハの展覧会が開かれた際に見ることができました。)
ドイツ・表現主義の彫刻家 エルンスト・バルラハ展
会期:2006年4月12日(水)-5月28日(日)
会場:東京藝術大学大学美術館 3F
20世紀に大きな足跡を残した芸術家の一人、エルンスト・バルラハ(1870~1938)の日本で初めての回顧展です。
彫刻、版画、劇作の分野で活躍したバルラハは、生涯「人間」をテーマとし、貧困や飢餓、戦争に直面する人たちの喜びや悲しみを 重厚かつ素朴な芸術作品に表しました。最も注目を集めるのが宗教性をもたたえる彫刻で、生と死の感情が簡素な輪郭線で重厚に表現 され、見る人を深い観照へと誘います。
本展では生涯に約100点制作された木彫の中から12点を出品するほか、ブロンズ24点、素描75点、版画36点、関係資料な ど合わせて約180点の作品を通して、バルラハ芸術の全容を紹介します。(『芸大美術館のホームページ』より⦆
●ベスト・テン(44頁)
私にとってのベスト・ファイヴというと、水木しげる『河童の三平』、岩明均『寄生獣』、宮沢賢治「春と修羅」、ウィルフレッド・オウエン「ソング・オヴ・ソングス」、ジョージ・オーウェル「鯨の腹の中で」があがってきた。
五冊足してベスト・テンにしてみた。魯迅『故事新編』、司馬遷『史記』、夏目漱石『行人』、トルストイ『神父セルゲーイ』、ドストエフスキー『カラマゾフの兄弟』、マーク・トウェイン『ハックルベリー・フィン』。
●三島由紀夫(68頁)
今もって私には、三島について感想をまとめにくい。敗戦後、「春子」などの作品に私はひかれた。やがて六十年安保のデモのすぐあとに書いた「喜びの琴」にも共感をもった。
著者三島のおこした政治行動にはついてゆけない。
●池澤夏樹(122頁)
池澤夏樹の著作では『ハワイイ紀行』が前人未到の試みだった。
池澤の著作に近いものを日本文学にさぐると、大岡正平の小説『野火』と実録『レイテ戦記』に行きつく。
『レイテ戦記』は、これまで日本の戦争小説の書き落としてきた、フィリピン住民からアメリカと日本を見る方向へと一歩踏み出している。
●試験問題(143頁)
試験問題になることのない「なぜ生きているのか」は、今もわからない。ただ、もう少し生きてみようと思って、問題をかかえているだけだ。
●白い丸(144頁)
先生は黒板に白墨で丸を書いて、くばった答案用紙に同じものを書いてごらんといった。一年生はすぐ答えを書いて、ハイ、ハイと手をあげた。その中に、手をあげない子がひとりいた。先生はその子のそばにじっと立って感心していた。その答案は黒く塗りつぶされ、その中に白い丸が注意深く塗りのこされていた。

☆関連図書(既読)
「語りつぐ戦後史(上)」鶴見俊輔著、講談社文庫、1975.08.15
「語りつぐ戦後史(下)」鶴見俊輔著、講談社文庫、1975.09.15
「グアダルーペの聖母」鶴見俊輔著、筑摩書房、1976.07.15
「右であれ左であれ、わが祖国」オーウェル著・鶴見俊輔訳、平凡社、1971.10.25
(2016年2月1日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
戦後思想史に独自の軌跡をしるす著者が、戦中・戦後をとおして出会った多くの人や本、自らの決断などを縦横に語る。抜きん出た知性と独特の感性が光る多彩な回想のなかでも、その北米体験と戦争経験は、著者の原点を鮮やかに示している。著者八十歳から七年にわたり綴った『図書』連載「一月一話」の集成に、書き下ろしの終章を付す。

レビュー投稿日
2016年2月1日
読了日
2016年1月31日
本棚登録日
2016年1月29日
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