ヒトはなぜ戦争をするのか: アインシュタインとフロイトの往復書簡

  • 花風社 (2000年12月1日発売)
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(2016.03.29読了)(2016.03.27借入)
副題「アインシュタインとフロイトの往復書簡」
2016年1月にEテレで「100分de平和論」という番組が放映されました。後半だけ見たのですが、その中で4冊の本が紹介されていました。
フロイト著、「ヒトはなぜ戦争をするのか?」(斎藤環)
ブローデル著、「歴史入門」(水野和夫)
井原西鶴著、「日本永代蔵」(田中優子)
ヴォルテール著、「寛容論」(高橋源一郎)

フロイトの本は、文庫本も出ているのですが、単行本が図書館にあったので借りてきました。
副題にもあるようにアインシュタインの問いにフロイトが答えるという往復書簡になっていますので、その部分だけだと50ページほどのものです。
アインシュタインの問いは、下記のものです。
「人間を戦争というくびきから解き放つことはできるのか?」
一つの方法は、「すべての国家が一致協力して、一つの機関を創りあげればよいのです。この機関に国家間の問題についての立法と司法の権限を与え、国際的な紛争が生じたときには、この機関に解決を委ねるのです。」さらに、この司法機関には権力が必要です。
平和が実現できていないのは、人間の心自体に問題があるのかもしれません。
権力欲、破壊への衝動、等が考えられます。

フロイトの答えは、以下のようです。
人と人の間の利害の対立、これは基本的に暴力によって解決されるものです。
社会が発展していくにつれて、暴力による支配から、法(権利)による支配へと変わっていったのです。
(多くの弱い人間が結集し、一人の権力者の強大な力に対抗したに違いありません。)
法律を守らせるには、法にのっとった暴力を行使できる機関を定めなければならない
戦争は大きな単位の社会を生みだし、強大な中央集権的な権力を作り上げることができるのです。中央集権的な権力で暴力を管理させ、そのことで新たな戦争を二度と引き起こさせないようにできるのです。
社会を一つにまとめるには、二つのものが必要だ。暴力が一つ、メンバーの間の感情の結びつき(一体化ないし帰属意識)がもう一つのものです。
人間の衝動は二種類ある。エロス的衝動と破壊し殺害しようとする衝動です。愛と憎しみということです。
エロス的衝動が「生への衝動」をあらわすのなら、破壊への衝動は「死への衝動」と呼ぶことができます。
結論「人間から攻撃的な性質を取り除くなど、できそうにもない!」
人間は指導者と従属する人間に別れます。
人類の圧倒的大多数は、指導者に従う側の人間なのです。
優れた指導層をつくるための努力をこれまで以上に重ねていかねばならないのです。
文化が発展していくと、人類が消滅する危険性があります。なぜなら、文化の発展のために、人間の性的な機能が様々な形でそこなわれてきているからです。

【目次】
フロイトへの手紙(アルバート・アインシュタイン)
アインシュタインへの手紙(ジグムント・フロイト)
アインシュタイン生涯と戦争
フロイト生涯と戦争
解説・脳と戦争(養老孟司)
付録・戦争の世紀(小田謙爾)
編訳者あとがき ナチズムの嵐に消えた世紀の戦争論(浅見昇吾)

☆関連図書(既読)
「精神分析入門 上」フロイト著・豊川昇訳、新潮文庫、1956.06.10
「精神分析入門 下」フロイト著・豊川昇訳、新潮文庫、1956.06.15
「物理学はいかに創られたか 上」アインシュタイン、インフェルト、岩波新書、1939.10.30
「物理学はいかに創られたか 下」アインシュタイン、インフェルト、岩波新書、1940.01.30
「相対性理論」アインシュタイン著・内山龍雄訳、岩波文庫、1988.11.16
「アインシュタインの発想」小野健一著、講談社現代新書、1981.06.20
「未知への旅立ち」アインシュタイン著・金子務編訳、小学館ライブラリー、1991.08.01
「アインシュタイン伝」矢野健太郎著、新潮文庫、1997.06.01
「アインシュタインの夢」アラン・ライトマン著・浅倉久志訳、ハヤカワ文庫、2002.04.30
「唯脳論」養老孟司著、青土社、1989.09.25
「解剖学教室へようこそ」養老孟司著、筑摩書房、1993.06.25
「考えるヒト」養老孟司著、筑摩書房、1996.07.10
「解剖学個人授業」養老孟司・南伸坊著、新潮文庫、2001.04.01
「虫眼とアニ眼」養老孟司・宮崎駿著、徳間書店、2002.07.31
「バカの壁」養老孟司著、新潮新書、2003.04.10
(2016年4月9日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
ナチズムの嵐に消えた世紀の戦争論!世紀の変わり目の今、日本に甦る!一九三二年、国際連盟がアインシュタインに依頼した。「人間にとって最も大事だと思われる問題をとりあげ、一番意見を交換したい相手と書簡を交わしてください」とりあげた問題は、戦争。相手は、フロイトだった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 100分de名著(海外)
感想投稿日 : 2016年4月9日
読了日 : 2016年3月29日
本棚登録日 : 2016年3月28日

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