或る少女の死まで 他二篇 (岩波文庫 緑 66-1)

著者 :
  • 岩波書店 (2003年11月14日発売)
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本棚登録 : 563
感想 : 49
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 「幼年時代」「性に眼覚める頃」「或る少女の死まで」という、犀星の自伝的中編3作品が時系列で並んだ文庫でした。
 「幼年時代」では、実の家族と引き離されて義姉に寄り添って成長していく健気な少年の視点で故郷の生活や自然が描かれていて、端正で美しい佳品。
 「性に眼覚める頃」は、自意識とか疚しさとかにおっかなびっくり向き合っていく感じが良い。詩仲間の友人やその恋人への感情の描写は瑞々しかった。
 「或る少女の死まで」では、最初の上京の終盤から帰郷を思い立つまでの生活が書かれている。この時に20歳ちょっと。都会での人間関係や貧窮などで少し汚れていく詩人の生活、そんな自分が許せないという若い潔癖さゆえの葛藤。文筆家になりたいというストイックな気持ちはいいのだが、作品の中の「私」は潔癖すぎてポキリと折れるんじゃないかとやや心配になる。
 しかし犀星は、食べていくために詩から小説へ仕事を広げたり、帰郷した後も何度も再上京して文筆を続け、後世に名を残す作家になったわけで、実際なかなか逞しい。生まれつき繊細な性質の少年が、酒乱の養母に苛められたり小卒で働かされたりする運命に負けなかったから、結果として心身を強く鍛えられたのかも、と思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 一般文学(国内)
感想投稿日 : 2014年11月22日
読了日 : 2014年11月22日
本棚登録日 : 2014年11月22日

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