読み始めたときには本当にルポタージュの類かと思ってしまったほど。
ドイツ人庶民の心をつかむソウルフード(?)カレーソーセージの発祥はいつどこで、誰によるものか?
子供時代の思い出を頼りに主人公が屋台の主である高齢となった女性を探し当て、ゆっくりゆっくり当時の物語を聞き出す。
そこで語られる彼女の人生は台所の寒さが骨にしみ、頬をこする毛布の粗い布地を感じるほどに生々しい。
戦争は遠景ではなく夜毎の空襲にも怯えながら、いっぽうで権力の濫用が市民の間をも引き裂くような、しかし終わりはもう誰の目にも明らかな、そんな日々。
女をつくった夫を追い出し、息子は前線へ、娘は訓練で遠くへ住まう。
自身は軍部の食堂で働きながら、侘しいアパートの最上階でぎりぎりの生活を続けている。
そんな独り暮らしのなか、息子ほどにも若い若い脱走兵をかくまうことになった彼女の思わぬ日々。忘れられぬ日々。
引きこまれて一気に読みました。
いつかドイツに行って、カレーソーセージの屋台をはしごしてみよう、絶対そうしよう。
ラストの言葉遊びの仕掛けが訳者あとがきで丁寧に解説されてしまっているので、ネタバレを嫌う向きはあとがきを先に読まないことをおすすめします。
(どんな作品でもネタバレがお嫌いなら、同様ですけども)
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説:海外
- 感想投稿日 : 2016年1月30日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2016年1月30日
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