命売ります (ちくま文庫)

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本棚登録 : 3015
レビュー : 388
著者 :
naonaonao16gさん  未設定  読み終わった 

ブクログをやっていなかったら、触れることのなかった作品だと思います。
「音楽」を読んで以来、約10年ぶりの三島作品です。

自殺に失敗して、命の使い道をなくした青年が、命を売る商売を始めたことで、変わってゆく命への価値観。

死にたいと思うことはあっても、実際に死のうとしたことがないわたしからしたら、彼の、本当の意味での死にたさはきっと、共感はできても、理解はできないんだろう。でも、「ゴキブリ」で死にたくなるというのが、なんというか、太宰とか、寺山修司とかなら、理解できたんじゃなかろうかと、思ってしまったのだ。

命に対しての価値観が変わっていく瞬間の彼の気持ち、例えば「恐怖とは思いたくない動悸がまだ胸にさわいでいて、羽仁男は虚勢を張り続けていなければならない自分を感じた」、は特に、単なる死への恐怖だけではなく、自分の気持ちがやはり生に拘っているのではないかという直面化、自分の意思ではない形で命を奪われるかもしれないことへの戦慄が伝わってきて、胸が苦しくなった。こうした気持ちの動きは不変で、だからこそ今の時代でも、こんなにも多くの読者がこの作品を手に取るんだろうな。

結局、羽仁男はこれからも、組織に追われて生きていくのか。なんとなくこのまま、なんでかんで生きていくんだろうなって、そんな気がするんだけど。

「音楽」もすっかり忘れちゃっているけれど、「禁色」、読んでみたいな。

レビュー投稿日
2019年6月3日
読了日
2019年6月2日
本棚登録日
2018年9月16日
9
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