箱庭図書館 (集英社文庫)

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本棚登録 : 3438
レビュー : 298
著者 :
坂口ナオさん 小説   読み終わった 

読了直後。熱が高まりすぎてまともなレビューが書けるか不安なままに書く。

乙一さんの本も初めて読んだけれど、物語を作ることが本当に好きな人なのだと思う。細々した表現というよりも、物語を作る力が凄い。

この本自体は短編集なのだが、「物語を紡ぐ町」に住む人々がさまざまに絡み合いながら、町のコピーのごとく物語を紡いでいく。
そう、それは「物語」といか言いようのない「物語」。

特に好きなエピソードは『青春絶縁体』と『ホワイト・ステップ』だ。

『青春絶縁体』

まず、タイトルがいいと思った。
「青春と縁がない」。まるで昔の私みたいだ。劣等感にまみれていて、自信がなくて。

特に胸を打ったのは、クラスの人気者の女子に話しかけられたとき、主人公が心のなかで独白するこの一節。

「僕はちがう。
彼女を見て、そうおもった。
容姿にもめぐまれて、性格も明るく、だれにでも好かれている。
だからこそ、ためらいなく人に話しかけられる。
他人に壁をつくらないのは、攻め込まれ、被害を受けた歴史がないからではないのか。
僕はちがう。
人の悪意というものをしっている。
そのくせ、青春というものにあこがれをもっていた。
入学当初、友だちをつくって、こんな自分を変えなくてはならないとおもっていた」(p.86)

この一節を読んだだけで、何かがこみ上げてきて、泣きたくなった。中学生時代の、劣等感まみれの自分を思い出した。

それからこのエピソードの凄いところは、「小説を書きたい」という気持ちにさせてくれるところだ。読みながらなんども、ルーズリーフを広げて物語を書き始めたくなる気持ちを私は抑えた。


『ホワイト・ステップ』

このエピソードは、雪を媒介にして平行世界がクロスする物語なのだが、舞台となる町の風景、母を亡くしたばかりの少女、生きがいのない男子学生が次第に使命感に燃えてくるさま、すべてが美しかった。

いっそ現実の世界を舞台にするフィクションはすべて、これくらい綺麗でいてほしいと思ったほど。

それから、母を大事にしたいと思った。

「口やかましい存在」として捉えがちだけど、この物語に登場するわたなべほのかのように母を失ったとき、私はきっと同じように後悔するんだろうと思った。

そういえば、私は親孝行らしい親孝行はほとんどできていない。どうすることが親孝行なのかも分からないし、それをする素直さも持ち合わせていないのだけれど。



……ながながと書いてしまった。

とにかく、これだけのことを考えさせ、実際におそらく私の行動を変えさせるこの小説はすごい。と思う。

最後に、めちゃくちゃ好きでした。読んでる時間が幸せでした。ありがとうございます。

レビュー投稿日
2015年12月27日
読了日
2015年12月27日
本棚登録日
2015年12月27日
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