豊饒の海 第四巻 天人五衰 (てんにんごすい) (新潮文庫)

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レビュー : 196
著者 :
naosunayaさん 日本文学   読み終わった 

三島由紀夫「天人五衰 ~豊饒の海(第四巻)」

タイトルのとおり、すでに本多は老いている。
「東京海上や、東京電力や、東京瓦斯や、関西電力の、『品格のある堅実な』株の持主であることが、紳士の資格であった時代」は終わり、「昭和三十五年からの十年間、・・・花形銘柄は日ましに下品になり、日ましにどこの馬の骨かわからぬものになりつつあった」(P127)。つまり、本多は頑迷になっていたのだった。

毒蛇にかまれてジン・ジャンが死んだあと、本多が新たな生まれ変わりだと信じた青年、安永透は、自分を選ばれた運命の持ち主と信じている。本多はこんどこそ早死にから救おうと彼を養子にとるのだが、透は次第に傍若無人になっていく。

豊饒の海、とはいわゆる月面の海のひとつのことだという。もちろんほんとうはただの砂漠でしかない。すべてを失った本多が月修寺(月の寺・・・)を60年のときを経てふたたび訪れるシーンでの、「この庭には何もない。記憶もなければ何もないところへ、自分は来てしまったと本多は思った」(P303)という一文は、人生の果てにたどりついたのがまさに豊饒の海であったことを示している。

これを書き終えたその日、三島は自ら命を絶った。
本多の独白。
「自分には青春の絶頂というべきものがなかったから、止めるべき時がなかった。絶頂で止めるべきだった。しかし絶頂が見分けられなかった。・・・絶頂を見究める目は認識の目だけでは足りない。それには宿命の援けが要る。しかし俺には、能うかぎり希薄な宿命しか与えられていなかったことを、俺自身よく知っている」(P131)。

読後しばしぼーぜん(結末は知っていたのに)。
三島由紀夫、享年45歳、私もついに年上になってしまった・・・。

レビュー投稿日
2019年1月1日
読了日
2019年1月1日
本棚登録日
2019年1月1日
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