ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)

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本棚登録 : 9287
レビュー : 891
著者 :
なおとさん ノベル   積読 

1935年には奇書であったらしい作品。

当たり前ですが、狂人の本でも狂気の書でもなくて、狂人を装って捻くれてみた正気の人の書いた本。怒るや呆れるには値しないので安心して読めます。捻くれの百鬼夜行ぶりが極彩色的で魅力的で、ポップカルチャーでは筒井氏や冨樫氏、米津氏の作品なんかに脈打つものを感じました。

途中まで読んだところですが、現代は既にこの作品に影響を受け、またその先へ駒を進めた数多の表現・思想に満ちた時代であるからか、最早この作品の筋書きは色褪せていて、新味の魅力は感じないです。このような古ぼけ書をして「読破した者は皆気が狂う」という謳い文句は、今となっては幾分看板倒れではないのかな。この手の古典に刺激を受けられるかと思って読んだ私が浅はかだったのですが、正直言ってその点は肩透かしでした。残念。

「みんな精神異常者ですよ」というのは現代中二病の走りのような世の見方ですが、今や殊更たいしておかしなことではなく、鼻息荒く暴こうとするほど特段秘匿されるような発想でもなく、閉塞感や憂鬱の種ですらなく、むしろそれを前提に社会・科学は築かれていることを踏まえて未来に関わっていくというのが現代の大人が普通に弁える態度だと思われるので、この作品を読むと今更随分初々しい話題に触れたなあという気持ちになります。もちろんこの作品があってこそ進められた知見が現代教養に息づいていることも感じられます。

ロボトミー手術を批判する「カッコーの巣の上で」が1975年の作品であることを踏まえると、この作品の違った価値が見えてくるのかもしれませんが、そちらの探究はまだ先になりそうです。

レビュー投稿日
2017年6月17日
本棚登録日
2017年6月17日
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