文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

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レビュー : 1522
著者 :
なおとさん ノベル   読み終わった 

はじめて京極夏彦の著作に触れたのは『魍魎の匣』で、これは二作目となる。この順番でよかった。『魍魎の匣』という一分の隙もない仕事の虜になっていなければ、この煉瓦書の大部分を占める膨大な前振りに耐えられなかったに違いないから。

この本を繙いたのは遅まきながら漸く触れた『魍魎の匣』に圧倒され、ネットを調べた際に『魍魎の匣』以上に支持されていると某所で紹介されていたから。なるほど、特に2年もの間身籠り続けた女性の解放の場面は凄まじく、予想を上回る衝撃を受けたもので、本書を読んだ価値は大いにあった。

ところで週刊少年ジャンプを長く読んでいた私には、同誌で連載していた怪作『魔人探偵脳噛ネウロ』が京極流を少年誌掲載作として翻案したものとみて間違いないだろうという印象が強かった。もちろん大雑把に「京極のパクリ」と括れる作品は無数にあるわけで、それだけ京極堂の仕事は凄まじかったわけで、何かを糾弾したり嘲笑したりしたいわけではない。ただ『魍魎』以上に『姑獲鳥の夏』の構造、特に憑物落とし以降の<犯人>の精神状態のカラクリはそのまんまだったのだ。

「イエ」を縦に繋ぐ「遺伝病」の系を、医学的・科学的に解体しながら生理的な幻惑を編み上げ、京極の術で祓い落とす美技は、軽妙の粋をあくまで装いながら堅実の極みでしか成しえぬもので、ある種技芸の理想だろう。読み終えてから時間をかけて反芻し、物語を組み立てなおしていく過程でさえも何度溜息を吐いたかわからない。まったく恐れ入谷の鬼子母神と、誰もが口ずさんだだろう。私もそうだ。半端ないわ。なんもいえねえ。

レビュー投稿日
2019年4月20日
読了日
2019年4月20日
本棚登録日
2019年4月20日
6
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