不幸な生い立ちから殺し屋を生業としてきた1人の男が、愛に目覚め、自分が冒してきた罪の大きさを知って足を洗う決意をする。ところが足抜けを許さない殺し屋の元締めに命を狙われて……。
とストーリーを書いてみると、ハードボイルド小説にでもありそうな筋書きである。だが「殺し屋シリーズ」3作目となる今作は、相変わらずこちらの予想を裏切るオフビートを刻む。
描かれるのは息子を愛し、妻のご機嫌取りに滑稽なほど腐心する中年サラリーマンの日常だ。ほのぼのホームコメディと言ってもいいくらい和やかなストーリーに、一点、影を落とすのが、家族にも秘密にしている主人公のもう一つの仕事、殺し屋稼業。章を追うごとにその影は広がっていき、中盤を過ぎたあたりで急転直下、読む者の度肝を抜くような展開が待っている。
これはきっと、ハッピーエンドなんだろうなあ。このシリーズには「悲劇と喜劇は紙一重」といった警句を思い出す。笑いと切なさが入り混じるような読後感が長く胸に残ります。
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- 感想投稿日 : 2020年1月16日
- 本棚登録日 : 2019年10月16日
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