ロシア語(あるいは、スラブ諸語)を専門とする言語学者の本。
学校教育における英語教育のあり方などを、かつての教え子であり、現職の英語教職員とのやりとりを交えて、英語教育について綴っている。
著者である黒田氏も大学で、専門外でありながら、いろいろな事情から大学で英語を教えることになった。
その時の経験などを通して、英語教育について語った本とも言える。
「早期から始める英語」「遊びながら学ぶ英語」「英語で教える英語」など日本の英語教育の代表的なものを、否定する。
英語で英語を教えるというは、生徒にとっては耳に負担。そもそも英語を理解しないと、何も理解できない。
教育する方も、日本語で話した方が、すんなり通じる所を英語で伝えようとするから、まどろっこしいことになる。これでは、本末転倒である。
専門家(プロ)としての英語教師にとって必要なことについて、英語教師自身に必要なことについて、いろいろな面から書かれている。
列挙された辞書類も面白く、参考になる。
定番の辞書から、マニアックな辞書まで。
ひとつ感動したのは、大学入試の英語学習の定番(?)である『フォレスト』が挙がっていること。
現職の英語教師の方も、文法で分からないことがあれば、本書を参照するという…。
(自分は、使わなかった。)
外国語学習が英語だけに偏らない姿勢も重要だと思う。
(筆者である黒田氏は一貫している)
しかし、英語教育そのものも否定しない。
「英語よりも国語を」という意見には、「どうして二者択一になるのか」と言い、両言語ともたくさん時間をかけて教育することが望ましいと意見する。
まったく、その通りである。
現在、中学・高校で英語を教えている教職の方、または、将来英語教員を志望している学生さんたちに、一読してもらいたい。
この本から得ることもあるかも知れないし、または、「いや、この著者の考えは間違っている」と憤られる方もいるかも知れない。
前者であるにせよ、後者であるにせよ、どちらにせよ、「外国語を教えること」について、自問自答できるはずだからである。
そういう意味でも、読んで欲しい。
もちろん、何も関係ない人が読んでも充分面白いです。
- 感想投稿日 : 2015年12月10日
- 読了日 : 2015年12月11日
- 本棚登録日 : 2015年12月6日
みんなの感想をみる