漱石文学が物語るもの――神経衰弱者への畏敬と癒し

著者 :
  • みすず書房 (2009年10月22日発売)
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感想 : 3
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自身の神経異常の原因を知るべく、夏目漱石の小説を読んできて、いよいよ到達したかな総まとめ的な本書に出会いました。

漱石の小説を読んでいると、とても共感できる部分があり、感慨深く、時には胸が苦しくなる時もありながら、一人苦しみの渦の中に溺れる自分を手助けしてくれるほどに希望を見出してくれたものです。

なぜ共感と希望を得られるのか。結局、神経衰弱者は”他人から理解されない”苦しみを抱き孤独の中に生きている、という事実があるからです。漱石の小説には神経症の苦しみが尽く記されています。
漱石自身が神経衰弱に悩みながら、気違い扱いを受け孤独を感じ被害妄想を抱き、それでも生きる方向性を追い続けたからこそ、「神経衰弱者への畏敬と癒し」につながる作品諸々、また悩む門下生に癒やしの手を差し伸べられる人になっていったのでした。

私は素人なので学術的価値の云々はわかりませんが、現代社会においても神経(精神)に不安を抱く人々が増えている中、「神経がおかしくなっている夏目漱石の好きな人」であれば、素人でもこれを読んで生きる力添えになってくれるでしょう。

則天去私の境地を目指して、歩き続けます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 精神医学
感想投稿日 : 2013年8月17日
読了日 : 2013年8月14日
本棚登録日 : 2013年8月7日

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