読む前は、本屋さんの仕事内容や出版業界のリアルな姿を少しでも多く知ることができるのではないかということだけに興味がありました。
仕事ができない名ばかり店長がいるおかげで、よけいな仕事をするはめになったり、むかつく言動にイラついたりする話題で「そう、そう」と読者の共感を得ながら、最後は「本屋さんで働けるってことは素敵な事なんだ!」と思わせる本に違いない、と。
仕事をしていれば本屋さんに限らず、社内のルールや人間関係、取引会社の理不尽な要求、めんどくさい客などストレスの原因は多種多彩にあります。
ストレスがたまり「いつでも辞めてやる!」と、理想と現実のギャップに思い悩みながら働き続ける書店員さんの心情と苦労は伝わってきました。
「バカ」には本当に無知で無神経で自分本位な「バカ」と、バカ正直や専門バカのような愛すべき要素を秘めた「バカ」があると思いますが、店長はこの両方の「バカ」でした。
主人公の谷原京子も、真面目で毎日余裕なく生きていて、世間のしがらみからうまく逃げきれずに時々「バカ」をみる人間のようです。
自分の事を「バカだな」と思うことができた時、人として成長しているのでしょうね。
全体的にはコメディタッチの話でしたが、謎解き要素もあって最後は登場人物の関係が謎だらけでモヤモヤする読後感になってしまいました。
覆面作家である大西賢也の正体は早い段階で察しがつき思った通りでしたが、なぜ谷原京子の日常を覗き見ているように詳細に知っているのかが謎です。
マダムこと藤井美也子とは何者で京子の父の店<美晴>に着いて店内を見た瞬間に泣き出した理由とか、マダムと店長、マダムと大西賢也、店長と大西賢也の関係がさっぱりわかりません。
まさか続編があるのでしょうか?
いやいや、ストーリー展開に拡張性をあまり感じないので続編はないですよね。
- 感想投稿日 : 2021年1月24日
- 読了日 : 2021年1月24日
- 本棚登録日 : 2021年1月7日
みんなの感想をみる