ぼく モグラ キツネ 馬

  • 飛鳥新社 (2021年3月19日発売)
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文字が筆で書いたような手書き文字になっているのは、原書の文字も太字の万年筆で書いたような筆記体の手書き文字だからだった。
直訳でなく、いい具合に意訳してある。こんな感じ。

1ページ目
"Hello"
"こんにちは"

2ページ目
(原書は絵だけ)
ぼくは、モグラとであった。

3ページ目
"I'm so small." said the mole. "Yes." said the boy. "but you make a huge difference."
"オイラはとってもちいさい"モグラがいった。"そうだね"ぼくはモグラをだきあげた。"でもきみがいると世界はでっかくかわる"

4ページ目
(どちらも絵だけ)

5ページ目
"What do you want to be when you grow up?" "Kind" said the boy.
"おおきくなったら、なにになりたい?"モグラにきかれたので、ぼくはこたえた。"やさしくなりたい"

モグラの絵が何なのか分かりにくかったり、誰が喋っているのか分かりにくい点をうまく補う訳になっている。

原書で読みたいと思う人は多いかも知れないが、筆記体の崩し字になっていて正直読みずらい。

人生に寄り添う言葉が満載ですが、以下に挙げる言葉は自分の後悔の念もあって沁みた。

"いちばんのおもいちがいは"
"かんぺきじゃないといけないとおもうことだ"
→ 子供の頃に完璧を目指すのは良いことだと決めつけていて、随分と無駄な努力をしたことを今になって反省している。

"たすけを求めることは、あきらめるのとはちがう"
"あきらめないために、そうするんだ"
→ たすけを求める=楽をする ということは自分のためにならないと考えていて、これも随分と無駄な努力をしたなと感じている。

"コップに水がはんぶんしか入っていないとおもう?それともはんぶんも入っているとおもう?"
"コップがあるってことが、うれしい"
→ おっと、そこに着目するのか。コップは何処にでもあるのが普通ではない世界もあるのだ。常識は皆異なっている。この会話の意味するところは深い。

子供の頃にこの本を読んだとして、当時の自分の考えを変えられたかというと、きっと何も変わっていないと想像できる。
だけど、このような本をもっと読んでおけば頭の片隅に記憶が残っていて、もう少し早く自分の固定観念を変えられたかも知れないと思う。

#言葉もですが、絵が素敵でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本
感想投稿日 : 2023年4月24日
読了日 : 2023年4月24日
本棚登録日 : 2022年12月30日

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コメント 2件

kuma0504さんのコメント
2023/04/25

Kazuさん、おはようございます。
話題になっている本ですが、読んだことはありません。
でも、対訳という試みはとても良いですね。

読んで「尹東柱詩集」にある「弟の肖像画」の一節

歩みをとめて
そっと 小さい手を握りながら
「大きくなったらなんになる?」
「人になるよ」
弟の説はまこと 未熟な答えだ

というのを思い出しました。
著者が知っていたかどうか、ではなく
どちらも人として優しいのだと思います。

Kazuさんのコメント
2023/04/25

kuma0504さん こんばんは。

「尹東柱詩集」は知りませんが、弟の「人になるよ」と答えた時の気持ちは、この本の"ぼく"が言った「やさしくなりたい」と繋がっているように感じます。
いろんな人が世の中にいて、悪人とか嫌な奴にも会っているでしょう。
そんな奴を「お前なんか人間じゃねえ」と心の底では思っているのかも知れません。
どんな"人"になるかはうまく言語化できなくても、"こんな人になりたい"という漠然としたイメージは持っているのでしょうね。

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