ブラフマンの埋葬

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本棚登録 : 947
レビュー : 212
著者 :
ネギコさん 愛のかたち   読み終わった 

小川洋子さんの本ばかり選んで読んでしまうのは
このひとの、こんな色彩感覚にも似たこの文才にあるとおもう。

ブラフマンという ネコなのか、犬なのか、はたまたイタチなのかも
わからない「謎」の動物の存在が「僕」の家に傷を負ってあらわれる。

小川洋子さんの文章によく使われるのだけれど
このかたの文章には「いち個人」の具体的な名前をつけない。
わたしは「私」であって、ぼくは「ぼく」
少女は「娘」であって、ほかを「彫刻師」など職業で表現する。

またその職業もうつくしいし、外国か日本か
そんなことはどうでもよくて、そこの世界観に生きる「ひとびと」という
存在がある。

もっとも好きなのが今回のような「僕」の存在や語りかけかただ。

「無理しちゃダメだ」
僕は頭を撫でた。
「君は怪我をしているんだ」

喧騒の中で生きているのをわすれるこの時間の静けさと対話のなんとやさしいことだろう。「僕」の存在というのは決してしかりつけたりなどしない。
けれど謎の動物のいたずらにも「これは机といって、本を読んだり、食事をしたり、手紙を書いたりするものなんだ・・」と説明をする。
人はこの説明という作業にどれだけ心が救われるかわからない。
ここに「愛情」というものをとても感じるのだ。

どうしてこんな風にすてきな言葉をえらぶんだろう。
小川洋子さんの世界というのは色彩のように生まれて、水彩のように水を多く含んでいる。鮮やかな色をぼんやりと描き、ときには油絵のようにねっとりとけれど、全体はやさしく物語る。

ブラフマンの最後ですら、彼女は「僕」としての注釈をつけた。
けれど最後の一文に、電車の中で涙してしまうのだった。

レビュー投稿日
2012年8月22日
読了日
2012年8月22日
本棚登録日
2012年8月22日
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