オールズバーグの本は読破したと思っていたら、こんな傑作があったなんて。
色彩の魔術師と言われる人が、この作品ではオールモノクロ。
縦長の大型絵本で、子どもに読むにはもったいない面白さ(笑)。と言うより大人向け。
早口で読むなんて決してやりたくないが、それでも約20分かかる。
肘を伸ばして持っている右手が、あかんことになりそう。
でも読みたい。
この神秘的な世界観。斬新なアングルの美しい絵。穏やかに終わる最後。なんとも粋なオチ。
これは悩ましい。ああ、超合金の右腕が欲しい。
魔力のなくなったホウキから落ちてしまった魔女。
ミンナ・ショウという後家さん(そう書いてあります)が魔女の世話をし、翌日魔女はホウキを
置いて立ち去る。
ところがこのホウキ、とんでもない魔力を秘めていた・・
昔話らしく、善人と悪人が登場する。
その悪人たちに、ちょっぴり辛口のオールズバーグはちゃんと仕返しをする。
そこがなんともまぁ、粋な計らいなのだ。
ラストの一ページでは、ふふっと笑いがこぼれてしまう。
片側が絵で片側がテキストというスタイルなのだが、そのテキストの周りをずらりとかぼちゃが
描かれている。でもモノクロなので全然邪魔ではない。
冬木立の下に立つ魔女の、なんて美しいこと。
ひどいかぎ鼻のおばあさんじゃないの!うんうん、やっぱりこちらの美人の方が断然いいわ。
ところどころ見開きの挿絵ページもあるから、そこはゆっくりと。
お話に深い奥行きを感じるオールズバーグの絵をじっくりとご堪能あれ。
これまで読んだどの本にも似ていない、見事な一冊。
全ルビ付きでないところや、やや難易度の高い表現がいくつも登場するところに、
いまどき珍しいほど子どもに媚びない潔さを感じる。
家庭ではお母さんの手助けがほしいところかな。読み聞かせにはせめて高学年以上に。
- 感想投稿日 : 2017年8月9日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2017年8月9日
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