魔法のホウキ (村上春樹の翻訳絵本集 5)

  • 河出書房新社 (1993年1月1日発売)
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本棚登録 : 178
感想 : 25
5

オールズバーグの本は読破したと思っていたら、こんな傑作があったなんて。
色彩の魔術師と言われる人が、この作品ではオールモノクロ。
縦長の大型絵本で、子どもに読むにはもったいない面白さ(笑)。と言うより大人向け。
早口で読むなんて決してやりたくないが、それでも約20分かかる。
肘を伸ばして持っている右手が、あかんことになりそう。
でも読みたい。
この神秘的な世界観。斬新なアングルの美しい絵。穏やかに終わる最後。なんとも粋なオチ。
これは悩ましい。ああ、超合金の右腕が欲しい。

魔力のなくなったホウキから落ちてしまった魔女。
ミンナ・ショウという後家さん(そう書いてあります)が魔女の世話をし、翌日魔女はホウキを
置いて立ち去る。
ところがこのホウキ、とんでもない魔力を秘めていた・・
昔話らしく、善人と悪人が登場する。
その悪人たちに、ちょっぴり辛口のオールズバーグはちゃんと仕返しをする。
そこがなんともまぁ、粋な計らいなのだ。
ラストの一ページでは、ふふっと笑いがこぼれてしまう。

片側が絵で片側がテキストというスタイルなのだが、そのテキストの周りをずらりとかぼちゃが
描かれている。でもモノクロなので全然邪魔ではない。
冬木立の下に立つ魔女の、なんて美しいこと。
ひどいかぎ鼻のおばあさんじゃないの!うんうん、やっぱりこちらの美人の方が断然いいわ。
ところどころ見開きの挿絵ページもあるから、そこはゆっくりと。
お話に深い奥行きを感じるオールズバーグの絵をじっくりとご堪能あれ。

これまで読んだどの本にも似ていない、見事な一冊。
全ルビ付きでないところや、やや難易度の高い表現がいくつも登場するところに、
いまどき珍しいほど子どもに媚びない潔さを感じる。
家庭ではお母さんの手助けがほしいところかな。読み聞かせにはせめて高学年以上に。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: オールズバーグ
感想投稿日 : 2017年8月9日
読了日 : -
本棚登録日 : 2017年8月9日

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コメント 2件

ねこ和毛さんのコメント
2017/08/10

何年か前、小学生だった子供たちと読んで大笑いをした記憶があります。
他に同じ作者の「二匹のいけないアリ」も大好きです。

nejidonさんのコメント
2017/08/13

村のすずめさん、こんにちは♪
お気に入りとコメント、ありがとうございます!
小学生だったお子さんたちと読まれたのですか。
いいなぁ、とっても楽しそうです(^^♪
同じ本の同じ箇所で笑える家族っていいですよね。
なかなか無いタイプの本ですし。
「二匹のいけないアリ」も面白いですよね。
アリから見た人間の世界というものが、ちょっぴりグロで怖くて可笑しかったです。
あの本を読んでから、家の中に入ってくるアリに少し優しくなりました(笑)

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