イラストで見る昭和の消えた仕事図鑑

3.24
  • (6)
  • (9)
  • (17)
  • (7)
  • (2)
本棚登録 : 178
レビュー : 24
著者 :
nejidonさん ノンフィクション   読み終わった 

「杣人(そまびと)」について調べようと、手に取った本。
いやぁ予想以上に面白くて、つい何度も読み返してしまった。
図鑑の形式なので、開いたどのページからでも読めるのがありがたい。
タイトルには「昭和」とついているが、どうしてなかなか、職業の盛衰が日本史・文化史の一面とも言え、形を変えて連綿と受け継がれているものも数多く、大変勉強になった。
丹念な取材と読みやすさに星5つではとても足りない。6個でも7個でもさしあげたい。

本書でいう「昭和の仕事」とは、昭和を象徴するもの、昭和に消えた仕事、昭和に全盛期を迎えた仕事、など150種類である。今では見つけることが困難なものもいくつもあり、初めて知るものもたくさんあった。
最初に書いた「杣(そま)」もそうだし、「カストリ雑誌業」「新聞社伝書鳩係」「おばけ暦売り」「大ジメ屋」・・・・「テン屋」「オンボウ」や「羅宇屋」にいたっては、???となる。
「靴みがき」は今も有楽町・交通会館前広場の風物詩として華麗に生き続けている。
お揃いのハンチング帽とお揃いの黒ベストに蝶ネクタイ、しかもこれが大人気の靴磨き集団だ。(宮城まり子さんもびっくりされることだろう)
子どもの頃「大きくなったら何になりたいか」と親に聞かれ、「チンドン屋さん」と言って叱られたことなども懐かしく思い出した。なっておけば良かったと、しみじみ。。
そして隆慶一郎さんがこよなく愛した「道々の輩」も、この時代には生き生きと活躍していたことをあらためて知ることにもなった。

中には詐欺師もいて、「泣きばい」などと呼ばれている。
これは寅さんが札幌大通り公園で船越英二さんとグルでやっていた「万年筆売り」だ。「ばい」とは「売」のこと。(源ちゃんがやっていた寺男も登場する。)
こんなものまで職業の範疇にいれるなんてと思われそうだが、貧困が生む詐欺まがいのことは案外日常的だったのではないかな。詐欺師は[3丁目の夕日]にも登場する。

では豊かになった今は詐欺師は存在しないかというと、むしろより巧妙・悪質になり、しかも組織化している。そもそも豊かになったとは、どういうことだろう。
この本を読んでいると分からなくなってくる。
貧しく不便な時代、そこには何かひとつ買うにでも会話があった。地域社会というものもあった。
ぬくもりや感情を交換することが、生きることそのものだったのだ。
合理化を求め、ひたすら早く希望のモノが手に入るのは、そんなに良いことなのだろうか。
私たちの祖父母の世代が心底望んでいた時代に、本当になったのだろうか。
「昔は良かった」という雑な総括論で締めくくる本ではいし、私もそういう受け取り方は毛頭していない。

見開きの2ページにひとつの仕事の紹介。成り立ちと歴史、仕事の内容などが簡潔に説明され、左ページにはシンプルな線のイラスト入り。
当時の給与データも記され、参考文献も載っている。
興隆を誇った仕事が何によって消え去る運命となったか、考え始めるとキリがない。

レビュー投稿日
2018年2月23日
読了日
2018年2月18日
本棚登録日
2018年2月23日
21
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『イラストで見る昭和の消えた仕事図鑑』のレビューをもっとみる

『イラストで見る昭和の消えた仕事図鑑』のレビューへのコメント

夜型さん (2018年2月23日)

nejidonさん、こんにちは。
おお、なにやら興味深い本を読まれましたね。

>ぬくもりや感情を交換することが、生きることそのものだったのだ。
>合理化を求め、ひたすら早く希望のモノが手に入るのは、そんなに良いことなのだろうか。

全くもってその通りだと思います。
昨今、日本の技術力神話の日本すごい!という話がありますが、実際のところは、長く庶民の暮らしが国の大きな支えになっていたのではと思います。
nejidonさんのおっしゃるように、アメリカ的な価値観はそもそも合わないのではと疑念を抱いています。
スーパーや大型ショッピングモールの登場で商店街の町並みはグッと勢いを失いました。
日本は庶民こそ大事なのに。
AI技術の登場で職業はますます少なくなるようです。その時このような本の価値はいよいよ高まってくると思います。

nejidonさん (2018年2月23日)

読書猫さん、こんばんは(^^♪
コメントありがとうございます!
このようなレビューにコメントをいただけるなんて、とても嬉しいです。

はい、それはそれは興味深い本でしたよ。
今回は図書館で借りたものですが、いずれ購入して傍に置いておこうと思います。

メディアの「日本すごい!」は、もう食傷気味です。
いくら最先端にあるような技術・企業に見えても、いつかは消えゆく運命かもしれません。
スポットを当てるべきは、汗と工夫と知恵で時代を生き抜いてきた庶民の方ではないかと、私も考えます。
そこには人と人の関係があり、人を介して仕事をするから人を大事にしていたのです。
人を大事にするから、人の作ったモノも大事にしたのではないでしょうか。
もちろん、昔が良いという単純な話ではありませんよ。
見落としがちな大切なものが、この本の中に息づいているように思います。
こちらの商店街もすっかり勢いを失って、今やシャッター街となっています。
かつての活気があふれた町は、もう戻らないのでしょうか。
少し貧しくならないと、誰も本気で考えないのかもしれませんね。残念なことですが。

コメントをする場合は、ログインしてください。
ツイートする