世界史を大きく動かした植物

著者 :
  • PHP研究所 (2018年6月18日発売)
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感想 : 93
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タイトルに「植物」と入っていると思わず手に取ってしまう。
それに何といっても稲垣栄洋さんだもの。
「なぜ仏像はハスの花の上に座っているのか」が大変面白かったので、さっそく読んでみることに。もう期待のはるか上を行く面白さで、蘊蓄も盛りだくさん。
著者の簡潔にして明快な文章で、学校で習う世界史などより数段興味深く読める。
私たち人間は様々な植物を栽培し利用してきた・・と思っているのは人間側の都合で、実は植物に支配されているだけで、植物の歴史がそのまま人間の歴史なのではと思わせられる。

採りあげられるのは、コムギ・稲・コショウ・トウガラシ・ジャガイモ・トマト・綿・チャ・サトウキビ・大豆・玉ねぎ・チューリップ・トウモロコシ・サクラ、の14種。
(文中ではもちろん全部カタカナ表記。読みにくいので時々漢字にしてみた)

特に面白かったのはトウガラシの章。
我が家で収穫したトウガラシを干しておくと、カラスがその辛いトウガラシをかっさらって行く。野生動物は辛いものは食べないはずなのにと不思議に思っていたら、鳥類は丸飲みするため辛さは感じず、短い消化器官を通り消化されずに体内を通過すると言う。
賢いトウガラシは、そんな鳥類を種子を運ぶパートナーとして選んだのね。
そしてトウガラシのカプサイシンが脳内エンドルフィンを分泌し、虜になるという記述で思い当たることがあった。
トウガラシを常食する民族は、異常なほど沸点が低いということ。仕事上それで苦労させられた経験を次々と思い出すこととなった。
国際交流をうたうなら、その民族の食事内容にも気を付けた方が良いと痛切に思う。

カフェインを含む「チャ」のために、様々な国々の争いが生まれたことなども。
アメリカ人がコーヒーを好むことの理由も。
あるいはジャガイモが「悪魔の植物」と呼ばれて裁判にかけられ、有罪となったのち「火あぶりの刑」に処せられたこととか。
トマトもまた、19世紀の米国で「野菜か果物か」で裁判になったとか。
トウモロコシは目からウロコが何十枚落ちたことか。きっと、神様はヒトよりも先にトウモロコシを作ったに違いない。

「しかし」「それでは」「ところが」などいう接続詞が登場するたびに胸がワクワク。
さて、次なる展開は?・・とそれは楽しみながらの読書だった。稲垣先生、今回もありがとうございました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ 評論
感想投稿日 : 2019年5月31日
読了日 : 2019年5月28日
本棚登録日 : 2019年5月31日

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コメント 2件

kazzu008さんのコメント
2019/07/12

nejidonさん、こんにちは。
フォローといいね、ありがとうございます。
『戦争と平和』へのコメントもありがとうございました。あちらにもコメントをさせていただきましたが、自分への通知しかこないので、もしかしたらお気づきにならないかもと思い、こちらにもコメントさせていただきました。

この『世界史を大きく動かした植物』もすごく興味深い本のようですね。ぜひ、今度読んでみようと思います。ご紹介ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

nejidonさんのコメント
2019/07/13

kazzu008さん、こんにちは♪コメントありがとうございます!
そして、お気遣いいただいてすみません。
先ほどそちらのお返事も見て参りました。
高2の夏の読破に驚いていただいて、むしろ驚きました・笑
若い頃は基本的に体力も時間も余ってますから(悩みも皆無だったし)、大人が
思うほど大変なことでもないのですよ。
そうそう、「トルストイの民話」はカテゴリーの「民話・昔話」の中に鎮座しております。
好みの分かれる分野ですので、概略をチラ見して(笑)OKのようでしたらどうぞ。

はい、稲垣栄洋さんの著作はどれも面白いのです。
文章も簡潔だし、興味をひく展開で飽きさせません。
kazzu008さんにも楽しんでいただけるのではと思いますよ。

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