きまぐれな読書―現代イギリス文学の魅力 (大人の本棚)

著者 :
  • みすず書房 (2003年4月24日発売)
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本棚登録 : 19
感想 : 2
4

I wanna be the leader   指導者になりたいな
I wanna be the leader    指導者になりたいな
Can I be the leader     指導者になれるかな?
Can I? I Can?        なれるかな?このぼくが?
Promise? Promise?    
Yippee I'm the leader    わーい、ぼくは指導者だ
I'm the leader       指導者だぞ
OK What shall we do?   よし、分かった で、何をしようか?

この短い詩は、英国ブレア首相のロシア訪問を記念して、モスクワの地下鉄に掲示されたものだという。ブレアさん、大喜びだったそうで。
「地下鉄の詩」と呼ばれる短詩はプラットホームや車内、種々の商品の広告に混じって掲示され、年間を通じて18篇の詩を乗客は読むことになる。
ロンドン発の「地下鉄の詩」はヨーロッパ中に広がり、やがてロシアにも渡る。

はじめはボランティアだった活動が、今は国立図書館や文化財団や出版社が共同スポンサーになって無料で展示されているらしい。
上記の詩は英国詩人ロジャー・マーゴの「指導者」。
以前ほど詩が読まれなくなったという文化の危機にあたって、詩人も作家も実業家も官僚も政治家も、同じ目的のために協力している。
なんとも羨ましい話だ。

と、こんな話が載っているのが本書。
一冊丸ごと、イギリス文学の魅力を縦横無尽に語ってくれる。
未知の作家さん、未知の書名が続々と登場するのにたまらなく面白い。
レビューなどあげず、こっそり秘密の愉しみにしておこうと、どれほど思ったことか。
大人の本棚シリーズ4冊目は、もう痺れるほどの魅力がある。

夏目漱石の作品に「自転車日記」というものがある。
英国留学2年目になる1902年(明治35年)9月、神経を病んで惨めな状態にあった漱石を、友人が自転車乗りの稽古に引っ張り出す。これがもう、なかなか上手くいかない。
ひっくり返ったり転んだりぶつかったり、有名なあの写真からは想像もできない可笑しさだ。
著者は、様々な「自転車文学(?)」を引き合いに出しながら、漱石の作品を推している。

イサム・ノグチの父であり作家である野口米次郎の話や、アジアに魅せられたイザベラ・バードの「日本奥地紀行」のこと。
19世紀初頭には書評文化が完成していた英国の、著名な書評家たちの文章を披露する。
ジョイスの古靴のエピソードやカズオ・イシグロの「日の名残り」を絶賛し、イギリス人に動物好きの多いわけを語る。
最初から最後まで、宝箱をひっくり返したような魅惑にあふれた書だ。

教養のための読書など、私も決してしたくない。
読みたいものを興味のままに読んでいくのだ。
わき道にそれようが、そこで面白いものが見つかるかもしれない。
それらがふいに、頭の中で繋がっていくときの嬉しさはたとえようもない。
ゆったりと散歩するように、英国文学の案内をしてくれる格好の書。
気になった本を読んでいきながら、何度でもこの本に立ちかえりたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本にまつわる本
感想投稿日 : 2021年3月22日
読了日 : 2021年3月22日
本棚登録日 : 2021年3月22日

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コメント 9件

goya626さんのコメント
2021/03/22

ほよよ~、面白そうだなあ。地下鉄の詩、いかにもイギリスらしい。夏目漱石かあ。こまごまとした短編、結構読んだんですよ。すっかり、内容は忘れてしまいましたが。

nejidonさんのコメント
2021/03/22

goya626さん♪
そうなんですよー。面白いんです。
知らない本の紹介だらけなのに、それが気にならないくらい。
野口英世の母親の手紙を電車の中で公開しているのは見たことがありますが、詩はないですね。
ああ、日本でもこんなことやってくれないかなぁ。

goya626さんのコメント
2021/03/22

ああ、野口英世のお母さんの手紙、泣けますよねえ。帰ってきてほしいと訴えてから、2年後にやっと英世は日本に帰ったみたいです。

goya626さんのコメント
2021/03/22

面白そうだと言いながら、なかなか読まないんですが、そのうちにね。すいません。

夜型さんのコメント
2021/03/22

Don子さん
ゴーヤさんが推してる丸谷才一が、『ロンドンで本を読む』という本を書いていましたよ。
こちらも英文学の書評集です。
オシャレで芳醇で、良いですよねえ、イギリスって。

夜型さんのコメント
2021/03/22

今日もDon子さんのレビューを読めてホッとしました。ぽかぽかです。

goya626さんのコメント
2021/03/23

はい、「ロンドンで…」読みましたよ。でも、すっかり内容は忘れ去っています。

nejidonさんのコメント
2021/03/23

goya626さん♪
野口英世のお母さんのことはジャンプで読んで知りました。
早く帰ってきて下され、という何回もの繰り返しが切実で泣けましたね。

ははは!本は読まなくても叱られません(笑)
goya626さんのペースで楽しまれますように!

nejidonさんのコメント
2021/03/23

夜型さん♪
丸谷才一さんのその本は確か文庫で読んだ覚えがあるのですが、探したら登録さえありません。
もしかしたらブクログ登録前のことかもしれませんね。
再読してみましょう(*^_^*)

こちらこそ、夜型さんに読んでいただけてほっとしました。ありがとうございます!

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