ブクログ上を猫好きさんが席巻しているように見える日が多い。
でも現実は決してそうではないはず。
たまたま猫について書かれた本が世に多く出回っているだけで、犬好きさんの数は猫好きさんの数をはるかに超えるものがあることだろう。
これは、そのどちらにもおすすめの一冊。
表紙に素敵な「主犬公(!)ジニー」の画像が載っているが、このジニーがそれは賢くて、次々に障害を抱えた猫を救い出しては愛情をふりそそぎ、犬好きだった主を猫好きに変身させたのみでなく、周りまで変えてしまうというお話。
しかも、驚くことにこれが実話なのだ。
著者フィリップ・ゴンザレス氏はプエルトリコ系アメリカ人。1950年生まれでニューヨーク在住。
スチームパイプ取り付け工として何不自由ない暮らしをしていたが、40歳のときに事故にあい。右腕の機能をほぼ失ってしまう。
失意のどん底にある日々、飼い主に捨てられて餓死寸前だったジニーと出会うが、このジニーが奇跡の能力を持っていた。。
全編通じてのジニー賛歌。もうそれはそれは、手放しの賞賛である。
ジニーはなぜか、障害を抱えた野良猫ばかりを探し当てる。時には耳の聞こえない猫までも!!
そして、この子を助けたい!ねえ、なんとかして!とゴンザレス氏に懇願するのだ。
そのたびに保護しては連れ帰り、病院通いを繰り返す飼い主。ジニーも、渾身の愛情をその子たちに注ぐ。
愛し、信頼するジニーの望みではあるけれど、いつしか飼い主も猫の愛らしさにとらわれていく様子も描かれていてほほえましい。
しかも、保護した猫たちの数もどんどん増えていく・・!画像もあるので、ぜひそれも見て欲しい。
ここで忘れてならないのは、ゴンザレス氏は半身が不自由な身の上だということ。
そして、そのため職もなく労災保険だけで生計を立てているという点だ。
当然金銭的に何度も苦しくなり、自分のものを売りに出たりもする。
この本を読んだ人の中には、少し頭のおかしい人だとゴンザレス氏を評するひとも多い。
理解できない出来事に出会うと、そういう結論を出したがるのが人の常だ。
だが、良く考えて欲しい。
本の中に登場する猫たちも、そしてジニーも、人間のために苦しみ、人間のしたことのために障害を抱えてしまったのだ。
つまり、これは本来は人間がしなければいけないことのはず。
だが、彼らは恨み辛みを述べることもせず、天職のように必死に生きている。
とりわけジニーの、なんと素晴らしい働きだろう。
神が使わした天使だというゴンザレス氏の表現があるが、まさに私もそう思う。
障害を抱えた猫のお世話は並大抵の大変さではない。
私も過去一匹だけそういう子がうちにいたことがある。
寝ても覚めても、というと大げさに聞こえるかもしれないが、それほどその子のことが心配で頭を離れなかった。
ほんの一瞬でも「歩いた」とか「立った」とか「おいしそうに食べた」とか、そんな束の間の喜びで狂喜していた。
ゴンザレス氏の日々がどんなに大変か、想像するにあまりあるというもの。
読み終えると、人間であることを少し恥じてしまう。
そして、すべての生き物には等しく不滅の魂があることを、心からいとおしいと思う。
迷い猫が今度うちの庭に現れたら、ジニー、私は間違いなくあなたを思い出すよ。
- 感想投稿日 : 2014年6月23日
- 読了日 : 2014年6月15日
- 本棚登録日 : 2014年6月14日
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