ハルばあちゃんの手 (日本傑作絵本シリーズ)

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本棚登録 : 122
レビュー : 25
著者 :
nejidonさん 絵本・秋   読み終わった 

少な目の静かな文章と、きめ細かく繊細な鉛筆画。
読み終えると、感動というだけでは言い足りない、大きなものが心に残る。

タイトルどおり、ハルばあちゃんの手が何度も登場する。
それは、生まれつき器用だったため、家族を支えることにもなる手。
そして、踊りの名手ともなった手。
死と別れと出会いとを経験する手。
暮らしを支え、愛をはぐくみ、やがて死を見送る手。
すべてを受け入れ、誠実に生きた証のような手なのだ。

戦前の海辺の町が背景で、PTSDだのという言葉さえなかった頃のこと。
誰かに幸せにしてもらおう、守ってもらおうなどと考える暇さえなく、みんながひたむきに自分の人生を生き抜いていた頃のことだ。
結婚相手は、かつて自分の作ったものを素直に褒めてくれた、同級生の男の子だった。
このエピソードが実に良くて、貧しい中でもお金とは無縁のところで心が繋がっていくのが、涙がにじむほど素敵だ。
ユウキチさんのおかげで、ハルばあちゃんの一生は、言い尽くせないほど幸せだったに違いない。
控えめな文章が、丹念に描かれた絵によって、それは饒舌になっている。

どのページにも、赤い小さな玉がほんのりと描かれている。
ハルばあちゃんを見守るようだったり、運命の道案内のようだったり、手から放たれる美しい魂のようだったりする。
これを見た子どもたちは、どんな解釈をするだろう。
最後のページでは、ハルばあちゃんが夜に浮かび上がる月の元で踊っている。
まるで「風の盆」のように静かで切なく、美しい。
一生懸命生きるということは、それだけで何よりの説得力を持つものなのだ。

人生を包み込む、芸術品のような一冊。
約9分。高学年以上に。大人の方もぜひ。

レビュー投稿日
2014年9月14日
読了日
2014年9月12日
本棚登録日
2014年9月12日
14
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