かないくん (ほぼにちの絵本)

4.09
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本棚登録 : 1652
レビュー : 180
著者 :
制作 : 松本大洋  糸井重里 
nejidonさん 絵本・通年   読み終わった 

「ほぼにち」で出した大人向けの絵本。
生と死に付いて考えるためにはちょうど良い素材だが、残念ながら読み聞かせには重すぎて不向き。かといってブックトークにも使えそうも無い。
ただ、あまり好きでもなかった松本大洋は、この作品でかなり見直すことになった。
何かしら良い点はあるものだ。

話は大きく3つに分かれ、最初は「かないくん」が亡くなるという部分。
赤いマフラーをした「かないくん」が鉄棒でくるっと逆上がりをして、次の場面に進む。この部分は文字ナシ。
2つ目は、その「かないくん」の話を絵本で作製途中のおじいちゃんが出てくる。
孫娘とおじいちゃんの会話が素敵だ。
3つ目に入るとき、再び文字ナシのページが見開きでふたつ現れる。
そして、孫娘がおじいちゃんの訃報を聞くことになる。

松本大洋の絵が少ない文字を補ってなお余りある。
白の余白を効かせ、その沈黙がまるで多くの感情を物語るようだ。
桜の樹のひこばえや、おそらくは学校で飼育しているのだろうたくさんのウサギたちを、効果的に場面に登場させている。そうか、この絵に2年も費やしたんだものね。
紙質も特殊で、地色の入っているところや地模様のある部分を、話の中でよく生かしている。

おじいちゃんの訃報を聞いたとき「はじまった」と思った孫娘の気持ちは、身内を亡くした経験のある方ならなんなく理解することだろう。
亡くなった人の命は、生きている自分の中に確実に生き続ける。
亡くなった人の目でものを見て、亡くなった人の考え方で考え始める。
そうして、いくつもの生を抱えて、死の時まで懸命に生きようと努めるのだ。
早逝であれ長寿であれ、生は死の始まりで、死もまた生の始まり。
連綿と続く命の流れを、静かに淡々と語る絵本。

レビュー投稿日
2014年8月26日
読了日
2014年8月26日
本棚登録日
2014年8月26日
18
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『かないくん (ほぼにちの絵本)』のレビューへのコメント

アセロラさん (2014年10月25日)

こんばんは、お久しぶりです。

この絵本、スマスマで小泉今日子がSMAPのメンバーにプレゼントした本のうちの一冊で知りました。
(ちなみに香取慎吾に贈られた本です)
番組中、本の内容までは語られてなかったのですが、そんな物語だったんですね。
キョンキョン、恐るべし。

訃報を聞いたとき「はじまった」と思えるなんて、強いですね。
nejidonさんの真摯なレビューも素晴らしいです。

nejidonさん (2014年10月29日)

アセロラさん、こんにちは♪
コメントありがとうございます。
お返事がすっかり遅くなってしまってごめんなさいね。

小泉さん、そんなお洒落なことをなさっていたのですか?!
ああ~、私もその番組を見れば良かったわ。
プレゼントした本のうちの一冊ということは、メンバーそれぞれに一冊ずつ贈られたのかしら。
小泉さんは結構な読書家でもあるので、どんなチョイスをされたのでしょうね。興味津々です。

訃報を聞いて「はじまった」と思えるには、時間がかかりますよ。
絵本の中の少女は、ある意味「才能」があったのかもしれません(笑)

読み聞かせに使えるかどうかの視点で星三つなのですが、大人の絵本という目で見れば見応えはじゅうぶんです。
アセロラさんも機会がありましたらぜひどうぞ。
後ほどそちらにもお邪魔しますね!

アセロラさん (2014年11月4日)

こんにちは。
お返事が遅くなりましたが、キョンキョンがメンバーそれぞれに贈った本はというと…、

木村拓哉→『潔く柔く』(いくえみ綾の漫画)
中居正広→『100万回生きたねこ』
草なぎ剛→『のと』(写真家・梅佳代さんの写真集)
稲垣吾郎→『えへん、龍之介。』(芥川龍之介を描いた漫画)

幅広いジャンルだったので、いちSMAPファンとしても、本好きとしても嬉しかったです♪

『かないくん』の「はじまった」…確かに、才能なのかもしれませんね。

nejidonさん (2014年11月5日)

アセロラさん、再訪してくださってありがとうございます♪
そしてコイズミさんの選書の、なんと素敵なことでしょう!
稲垣君が読書家なのは有名ですが、他のメンバーはどうなんでしょうね。
木村さんや中居さんは、なかなか本を読んでいる姿が思い浮かびません(笑)
いや、観察する機会もないので勝手な想像ですが。
「いくえみ稜」さんて、血管が細すぎて点滴の注射針もなかなか刺さらないような、そんな女の子を描くひとですよね。
別マを読んでいた頃、大好きだった方です。ああ、懐かしい。。
お名前を見ただけでまた漫画を読みたくなってしまいます(笑)

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