芸術起業論

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  • 幻冬舎 (2006年6月1日発売)
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・論理の重要性
 アートの本場であるアメリカの姿勢は〈謎解きゲーム〉。快感に溺れてる富裕層の目を見開かせるような新しい概念の創造が求められている。そこで論理が重要になる。歴史の文脈の理解と提示、自分の好きの根拠の究明、それを他国の言葉に翻訳すること、敵地の論理の分析。これらがあってこそ独創的な個人のアイデンティティというものが評価される。つまり作品の美的な受容は理論的な理解の上に成り立つ。

・金とアート
 アートは人間がすることだからまずもって金がいる。金は最強のコミュニケーションツールであり、芸術家の最後の壁。これが目的になってはいけないが、手段としてなければ評価を引き寄せられない。なぜなら現代美術は概念の遊びでありコミュニケーションなので、同じコミュニケーションである金銭がものをいうから。

・アーティストの心得
 歴史を学べ。自分の好きを徹底的に究明しろ。その好きを歴史に接続すれば自分が作りたいものが自ずと見えてくる。そして凡人はひたすら努力しろ、宮崎駿のように。あとは集団を作ってパトロンを獲得しろ。パトロンから独立した孤高の芸術家像は近代に特有のもので、より広範な歴史的文脈からすればパトロン+集団制作が定石。

・天才はマティスのみ
 本文で真の天才として示されているのはマティス。彼は芸術家が自由になるプロセスを表現しているとされる。逆にピカソなんかは腕力で描いてるから人間の限界を示しているとされる。ここら辺は感性的な説明しかなかったが、深掘りできたら面白そう。

・セクシュアルな存在としての花
 『侍女の物語』で「花は植物の性器だ」と言われていたことを思い出す。村上は大学受験予備校での模写でそのことに思い至り、それがあの特徴的な花のキャラクターの誕生に繋がったそうだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年9月1日
読了日 : 2021年8月29日
本棚登録日 : 2021年8月28日

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