五体不満足

著者 :
  • 講談社 (1998年10月16日発売)
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感想 : 276
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チーズダッカルビみたいな一冊。「チーズダッカルビ食べたよー」と報告する為だけに生まれた食べ物で、味そのものは子どもが好きそうなものを重ねただけで実にチープ。なので味に深みがなくすぐに飽きる。

転じて、こんなにすごいんだよ頑張ったよ見てみてー!がちょっと前面に出すぎた、三流出版社に拐かされた勘違い経営者が出しがちな、ページあたりの文字数が少ない自伝を読んでいる気持ちになった。なんだろう。濃いんだけど薄いというか。

結局、他人の人生の中に自分の人生を浮かべる人は、いつもなにかと自分を比べて一喜一憂、乱高下激しく、いつも苦しそうな顔をしている。人と比べてできないことが多いんだから尚のこと、障害者がそうなりがちなのはわかる。そこを乙武さんは拾って、自分が世間に対して出来ることを突き詰めていくことに幸せはあると、そういう意図じゃないかと理解をしている。

派生して、障害者がもっとおしゃれに気を配るべきってのはとても納得した。確かにそうだ。ファッションを楽しめる人は、人の目を気にしているのではなく、逆に自らがこうありたいと自己実現できている人だと思うので。目立ちたくない人ほどそれは逆に世間の目を気にしているんじゃないか。障害者ってみんな地味じゃん。それはつまりそういうことなんだろう。

あと、走ったメートル数に始まり、部活の成績、学歴、海外経験、団体の運営経験がつらつら延々と書いてあって、人事採用担当も苦笑いって感じの内容が続くんだけど、就活生と乙武さんの心理は深いところでどこか似ていると思う。自分を良く見せよう、だと語弊があるので「こんなことが自分にはできますよ」に近いか。

「障害をハンディキャップと捉えずに個性として捉える」と言っておきながら、ハンディキャップがあってもここまで出来ますよに結局は終始してしまっているあたり、血気盛んな学生さんだなって印象が拭えない。成功例だけでなく失敗例や辛かったことを元にして、1つの出来事を深掘りしてでもいいから、もっと深層心理的なものを人生の中から引き出して見せて欲しかった。それだって乙武さんにしかできないことじゃないのか。

あと、ハンディキャップがあっても美女と不倫できた成功体験も別添資料で履歴書に載せとけ。その件知ってたうえに今これ読んで思うけど、この人絶対「こんな自分でも◯◯できました」への執着が強すぎて、倫理とか道徳とか軽視するタイプだわ。これコンプレックス強い人によくあるやつだから、間違いなく乙武さんは障害に対するコンプレックスを真からは克服していないと思うよ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年12月4日
読了日 : 2018年12月3日
本棚登録日 : 2018年12月3日

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