経度への挑戦―一秒にかけた四百年

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レビュー : 11
制作 : Dava Sobel  藤井 留美 
newtongakuinさん 理科   読み終わった 

何百年もの間、人は船の現在地を知ることなく航海していたとは驚きです。ギリシャの時代から緯度を測るすべはあったものの経度を正確に測る実用的な方法がなかったからです。コロンブスもマゼランも勘を頼りに進むしかなかったのですね。冒険のうちはよいとしても、船を使った海外交易が活発になり、それに比例して海難事故が相次ぐようになると、勘に頼ってばかりもいられません。1714年、イギリスは経度法を制定し、経度誤差2分の1度以内の測定方法の考案者に対し「国王の身代金」に相当する2万ポンドの賞金を出すと宣言します。 
その地点の緯度を知る方法はいくつかあります。
①北極星をさがして、その仰角を測れば、それがそのままその地点の緯度となります。
②太陽の南中高度を観測し、春分・秋分の日なら「90度-南中高度」がその地点の緯度と等しくなります。
しかし経度を測定する方法はとなると、
観測地点での太陽南中時刻を計測して、標準時間とのズレを計算するというのが一番簡単な方法です。
例えば明石(東経135度)でのこの日の南中時刻が11時45分、観測点の南中時刻が11時49分ならば、経度は明石より1度西だから東経134度であるというように。(経度は1度東に進むごとに南中時刻は4分早くなる)
さて、そうとは言え問題は、港を出た船の上で、現在時刻を知る術がないということです。時計はありました。しかし18世紀初頭の時計というのはせいぜい振り子時計です。波に揺れる船の上ではまったく役に立たないのです。では、どうやって経度を知ればよいのか。当時の学者たち(ニュートンやハレーもでてきます)はあくまでも天文学的方法に活路を見出そうとしますが、そこに名もなき一介の時計職人が名乗りを上げます。時計職人の名前はジョン・ハリソン。その試みは、当時不可能といわれていた「船上で正確な時刻を計ることのできる時計」の開発だったのです。「経度誤差2分の1度以内」という条件をクリアするための精度とは、40日間の航海で誤差2分、一日あたり誤差3秒というおよそ不可能にしか思えないような内容だったのです。幾多の試行錯誤と苦労の末、1762年、81日間の大西洋横断航海でわずか5秒しか狂わなかったという精度が実現されます。これがハリソンのクロノメーター「H4」です。これにより、ハリソンは2万ポンドの賞金を手に入れることになるのです。
キャプテン・クックの航海にもこの時計が積まれ、1831年に出港したチャールズ・ダーウィンのビーグル号には22個のクロノメーターが積まれていたそうです。 GPSやカーナビが全盛のこんにちですが、2つの時計の時間差から距離を割り出すことに関しては、「海上時計」のころと変わりありません。便利な世の中を享受する一方で、その陰に先人の努力のあとを実感できる良書です。

レビュー投稿日
2013年3月25日
読了日
-
本棚登録日
2013年3月25日
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