知ってるつもり――無知の科学

  • 早川書房 (2018年4月4日発売)
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本棚登録 : 1691
感想 : 114
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とても興味深く読んだ。さまざまな分野の研究成果に立脚しつつ、一般の読者にもわかりやすく書かれているところが良い。個人は(当人が思うよりずっと)無知だが、それにもかかわらず人間が高度な文明社会を築いているのはなぜか。それは、ごく少数のカシコイ人たちががんばってるからではなく、私たちは「知識のコミュニティ」に生きているからだ、という冒頭の論から、なるほどねという説得力たっぷり。

前半は、そうした明快で新鮮な考察が次々述べられていく。
・なぜ思考するか。行動のためである。
・どう思考するか。人間は因果的推論を得意とし、その力で繁栄してきた。因果情報を交換する最も一般的な方法が「物語」である。
・人間は、自らの身体、周囲の世界(もの)、他者を使って考える。テクノロジーも思考の延長である。
・テクノロジーによる超絶知能の脅威が言われているが、人とは違い、テクノロジーは(まだ)志向性を共有しない。   などなど。

後半は、科学や政治についての理解や、「知能」のとらえ方に話が進み、教育のあり方について具体的な提言もされている。確かに、著者たちの言うとおり、知識が個人の脳に蓄えられるものではなく、コミュニティで共有されるものであるならば、旧来の教育方法は大転換の必要があるだろう。自分は旧人類なので、ここで述べられているような教育の姿はどうもピンとこないのだが、インターネットの爆発的な普及で大きく様変わりしていく世界で生きて行くには、そうした転換が必要なのかもしれない。

一番おもしろいと思ったのは、著者が終わりの方で書いているそのとおり、読後、ここに書かれているのは自明のことで、前からわかっていたような気になることだ。そんなはずはないのに。こんなふうにして人は、いや私は、いろいろな知見をまるで自力で考えたように思い込んでいるのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: サイエンス
感想投稿日 : 2019年5月24日
読了日 : 2019年5月23日
本棚登録日 : 2019年5月23日

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