有頂天家族

4.06
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本棚登録 : 5197
レビュー : 887
著者 :
たまもひさん 日本の小説   読み終わった 

「2」を読む前に再読。本作が出たのはなんせ8年も前のこと、印象的な場面場面が断片的にうかぶものの、はて、どんなお話だったかな?ということで、おさらいしておくことに。

いやー、やっぱり面白いわー。なんとキュートなお話であろうか。わたしのモリミー愛はこの頃が最高潮であったなあ。この後のは、「宵山万華鏡」以外、どうもぴったり来なくて、わたしの好きだったモリミーはどこ?という気分だったりする。うーん、「二代目の帰朝」はどうだろう。ちょっとドキドキ。

何がいいといって、ふざけ加減が絶妙なこと。狸が主人公ではあるけれど、ファンタジーに流れず、でもどこまでも「物語」でリアルではない。わざわざ「作り物です」と大書してある世界の中に、こっそり真実が紛れ込ませてある。その「真実」は、なんだかすごく恥ずかしそうにしている。

舞台となる京都というところが、なんというか、地上から5センチくらい浮いてるような、現実感の希薄な町なのだ。一連の森見作品は、こうした京都の特性と不可分だと思うのだが、この感覚が一般的なものかどうかはよくわからない。通りや店の名に涙がちょちょぎれる思いなのは、わたしだけではないとは思うけど。

これはもう言い尽くされていることではあるが、独特の語り口が好きだ。本作ではお得意の韜晦は抑えられていて、かなり素直な語りになっている。キラッと光る言葉があちこちにある。「世に蔓延する『悩みごと』は、大きく二つに分けることができる。一つはどうでもよいこと、もう一つはどうにもならぬことである」なーんて、思わず感心しませんか?

四季の描写が美しい。何気ない風景に季節の変化が忍ばせてあって、所々でしばし立ち止まって味わう。夏の耐えがたい暑苦しさも、冬のしんしんとした冷たさも身に迫るようだ。ことに冷たい空気感を描くのがうまいなあと思う。

偽叡山電車が都の通りを南へ疾走する場面のスピード感が、本編の白眉。
「軒燈、街燈、飾り窓の明かり、飲み屋の軒先に吊された大提燈、西洋料理店の明かり、古道具屋の店先に置かれたランプ、窓の外を流れ去る街の灯が偽叡電の車体に映ってキラキラしている」
寺町三条あたりから立ち上がり、新京極・河原町・先斗町の夜景を飛び越えていく「うねくるチューブのよう」な光り輝く白いトンネルを幻視して、ほーっとため息をつくのだった。

レビュー投稿日
2015年4月24日
読了日
2015年4月24日
本棚登録日
2015年4月24日
2
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