シアター! (メディアワークス文庫)

3.94
  • (1289)
  • (2188)
  • (1262)
  • (129)
  • (23)
本棚登録 : 13250
レビュー : 1549
著者 :
制作 : 大矢 正和 
nico314さん 有川浩   読み終わった 

子どもの頃、いじめられっ子で家にこもりがちだった巧は、
兄の司とヒーロー戦隊のキャラクターである赤と青色の人形で
ストーリーを考えながら遊ぶのが唯一の楽しみだった。

現在は工務店で営業の仕事をしている司は
巧が学生時代に立ち上げ、主宰している劇団「シアターフラッグ」が
赤字で立ち行かなくなっているのを知って
お金を貸す代わりに「2年で返済できなかったら、劇団をたため!」と条件を出す。

優しい性格で人と争うことを好まず、劇団員全員に役を与えることを優先し、
作品の質を上げるために配役を精査し脚本をより厳しい姿勢絞り込むことに
今までは手を付けずに来た巧だった。
声優としてキャリアを積み、「シアターフラッグ」に新たに参加することになった
千歳の出現で、巧にも作品の成功を目指す欲が出てきて・・・。


子どもの頃にいじめられた経験から傷つくことを恐れつつも、
なぜか甘え上手で、人の心をつかんで離さない巧。
人たらしなんだよね。
お勉強も、スポーツも子供のころから何でもできて、その上信頼される司。
一見隙がなさそうなのに、思わぬところに人間らしさが垣間見え、これまた大変魅力的な人。
姉御肌でしっかり者、看板女優の牧子さんは、巧のことが気になる様子だけれど、
どうやら巧は他の人が気になる様子で、何角関係なんだろう・・・?


ああ、これは作る者だけが分かる言語だ
 <中略>
同じ場所にいて同じ言葉を聞いても絶対に届かない。
そんな領域を『彼ら』は持っている。(P209)


どこまでも深い愛情と信頼でつながる兄弟。
弟の辛さも喜びも包み込むように認めてきた兄にも、入り込めない世界。

スポーツでも仕事でも何かに打ち込み、同じように高みを目指さしていても、
その先へ行ける人とそうでない人がいる。
行けた人の中には魂の言葉というのか、寄り添い理解しあえる言葉があるのだと思う。
どこまでも研ぎ澄まされる才能を認めあえる人に出会えるってうらやましい。

そういう人たちが発する言葉や雰囲気を楽しみつつ、
心が縮こまらず自分らしくのびのびと居られる人間関係もそこにある。
有川さんの描く気持ちのよい世界を十分堪能できる1冊です。

レビュー投稿日
2013年6月1日
読了日
2013年5月31日
本棚登録日
2013年5月31日
10
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『シアター! (メディアワークス文庫)』のレビューをもっとみる

『シアター! (メディアワークス文庫)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

『シアター! (メディアワークス文庫)』にnico314さんがつけたタグ

いいね!してくれた人

ツイートする