オール・マイ・ラビング 東京バンドワゴン (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2012年4月20日発売)
4.15
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本棚登録 : 2029
感想 : 164
5

東京の老舗古書店『東京バンドワゴン』を中心に繰り広げられる、シリーズ第5弾。

1冊のなかで夏から春へと四季が一巡する4つの章からなっていて、堀田家とその周りを巻き込んで今回もいくつもの事件や出来事が起こる。家訓<文化文明に関する些事諸問題なら、如何なる事でも万事解決>とあるように円満な解決へと向かって・・・。

今回の見どころは・・・。
『夏』の章では、きらめくようなイケメンの青が亜美さんの弟・修平くんに一芝居打つシーン。
『秋』には花陽の友人、双子の神林兄弟(これまた、イケメン予備軍!)のしゃれたいたずら。
藤島さんの友を思う気持ちとかすかな憂い。
雑誌記者・木島さんの東京バンドワゴン、滋味あふれる堀田家に対する思い。
『冬』には知にあふれ学問を真摯に追及する紺だからこそ、自分の到達できない高みを目指すことができる大学の恩師に対する敬愛の情。
そして、なんといっても我南人さんのLOVE!LOVE!LOVE!
『春』は小学校を卒業する研人くんのクラスメートと我南人さんに対するLOVE。

どの場面も読み手の琴線に触れる数々の言葉で、味わい深いものになっている。どれも印象深く、じんわりと熱く、涙腺がゆるむけれど、何といっても紺と我南人さん、そして研人くん!

紺の穏やかで、温かく、思慮深い面だけでなく、学問に対する熱い思いが読み手を惹き付ける。
この人がいてくれるから、ストーリーが締まるとというか、厚みを増していると思う。

そして、今まではあえて主人公をあげるなら、勘一さんなのかなと思っていたけれど、我南人さんの存在感が大いに増しました!
「前向きのぉ、前のめりの失敗はぁ、絶対に後悔なんか連れて来ないんだねぇ。生きてるうちにできることをやってみなきゃあ、それが良かったかも悪かったかもわからないんだよぉ。」(P278)

で、今回、私のイチオシは研人くん!
今までは年上の花陽ちゃんに押され、おっとりしたよい子の印象が強かった。時折ドキッとする男前な態度を見せてくれることがあり、将来有望だなあとは思ってました。
しかーし、
今回、その聡いところと度胸のあるところ、そして、背筋の伸びた頼りがいのあるところ全開で、きゅーんとなるのは間違いありません!!
う~ん、いい男が多すぎて目移りします。

もちろん、日常を支える女性たちの存在も忘れてはいけません。彼女たちのやりとり、食卓や家の周り、犬や猫などへ丁寧な描写があってこそ、バンドワゴンワールドにどっぷり浸れるのですから。
かんなちゃんと鈴花ちゃんという新たなアイドルも登場し、楽しみは増す一方!

藤島さんの恋の行方(しばらくシングルでいてください!)、子ども達の成長、次々巻き起こる出来事などなど・・・。
巻を重ね、ますます楽しいシリーズに目が離せません!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小路 幸也
感想投稿日 : 2014年5月4日
読了日 : 2014年5月3日
本棚登録日 : 2014年5月3日

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