からくりからくさ (新潮文庫)

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本棚登録 : 4944
レビュー : 522
著者 :
nico314さん 梨木香歩   読み終わった 

『りかさん』から数年経て、主人公の蓉子は染色を仕事にするようになっていた。祖母が遺した家で3人の下宿人を置き、共に暮らすこととなる。
鍼灸を学ぶためにアメリカからやってきたマーガレット。美大の学生で、機織りをしている紀久とテキスタイルを研究している与希子。
4人の共同生活の日常と人間関係の機微を梨木さんらしい筆致で描いていく。

この作品の発表の方が『りかさん』よりも先なので、こちらから読んだ方がよかったのだと思う。というのは、『りかさん』に収録されている『ミケルの庭』が本作の数年後を描いており、私には状況がわかりにくいところがあった。ようやく今になって、背景はこうだったのかとつながった気がする。後で読み返しておこうと思います。

それにしても、梨木さんの書く小説は、登場する人たちの配置が絶妙だといつも思う。何らかの弱さや苦しみ、傷ついた過去を抱え、自分を解放できないつらさを常に味わいながら生きていく人。人との距離感を上手にとれなくて迷っている人。自由で無邪気な子どもっぽいところが見え隠れする人。穏やかでありながら、しっかりとした芯を持ち、いろいろな困りごとも淡々と受け止められる不思議と頼りになる人。
どの人も決して一面的な良し悪しを切り口にすることはなく、弱さと強さを併せ持ち、互いを補いあうような関わりを見せている。
読んでいると、「誰にでも、あなたの中の良さを見つけ、大切にし必要としてくれる人が必ずいるのですよ。」と梨木さんが語りかけてくれているように感じられる。人や人に起こるすべてのことをあるがままに見つめて、そのまま肯定してくれる世界が広がっているように感じるから。

この作品の登場人物も、家族関係の中で感情のすれ違いを解決しないまま今日まで持ち越していたり、自分のありったけの時間と労力を費やして書き上げた研究成果に対して横槍を入れられたりする。自分の感情を持て余すことも。。読者が苦しさを共有し、一緒になって腹を立てることでしょう。
それでも、4人の女性たちは考え方の異なる仲間の存在に大いに影響を受けて、また自分自身で考えを整理しながら、道筋をつけていく様子が好ましい。

そして、りかさんに待ち受ける結末。

目の前で突然起こる出来事に読んでいる私も、もう今では会えない人に対して「ああ、こうすればよかった。こうしていたなら・・。」という抑え込んでいた気持ちがあったことを思い出した。

読んでいると
苦しいのになぜだか許されるような
哀しいことなのになぜだかいつか癒えると思えるような
辛いのは自分だけではないと思えるからなのか・・・。

もうしばらく梨木さんを追いかけていこうと思っている。

レビュー投稿日
2015年1月17日
読了日
2015年1月15日
本棚登録日
2015年1月17日
8
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