悟浄出立

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本棚登録 : 1520
レビュー : 280
著者 :
nico314さん 小説   読み終わった 

「西遊記」の沙悟浄、「三国志」の趙雲、「史記」の虞姫、司馬遷の娘など、脇役たちに光をあてた短編集。

西遊記というと、やはり孫悟空が頭に浮かんでくる。次は猪八戒か三蔵法師か。悟空と言い争う八戒にそれを諌めるお師匠様の図。
さて、沙悟浄はどのように絡んでいたのか?

ドラマも、人形劇も見たはずだが、今一つ思い出せない。なにか、極力浮世には関わらないでいようとするというか、第三者的な立場を保つというか、消極的なイメージだけが残っている。

それが、万城目さんが書くとそうはならないのですよ。
まったく人間臭いというか、自らの小ささ、これというもののなさを自覚していながら、何につけても周りのものと自分を比較し、序列をつけようとしてしまう。
相対的な自分の立ち位置がやたらと気になる沙悟浄。
あっけらかんとして自由奔放な悟空にも、自分の欲をコントロールできずおバカっぽいけれど実は優秀であったらしい八戒にも敗北感を感じ、みじめな気持ちとも折り合いがつけられない。三蔵法師に対しても自分など必要としていないのではないかと、疑念を抱きながら旅を続けている。

本当に、悟浄はこんなふうに考えながら、もやもやした気持ちを抱えて、ひたすら、歩いていたのかもしれないなあ。自分の中に存在するネガティブな感情に気づいてしまい、人はどうなのだろう、このような苦しみを感じることはないのかと、いてもたってもいられなくなる。
それでも八戒から旅を続ける理由を聞くうちに、自分の中に思わぬ変化が訪れ、ようやく自らの意志によって第一歩を踏み出した。

うつむいていたときにはまったく気づかなかった風景。顔をあげたとき、すぐ隣に自分を認め、見守ってくれる仲間がいた。それぞれに得意・不得意があり、そのよさを集めて力を合わせ、何かを成し遂げようとする。
そのためには、反応を心配して何もしないのではなく、勇気を出し、他に対して行動を起こさねばならない。一歩踏み出してしまえば、たいていのことは、取り越し苦労であったと後から気づけるだろうし、二歩目も続くというもの。

万城目さん、とてもよかったです・・・。

その他の話も、なかなかいい。
元の話を十分理解していたなら、もっと興味深く読むことができたとは思います。
もちろん、知らなくても十分楽しめますよ。

ただ、虞姫については、高校生のときの漢文の授業で習ったときの印象を大きく覆すものだった。
彼女はもっとはかなげで、哀しく美しい人だと記憶に残っていたが、本書ではなかなか気の強いところがあり、言われたとおりに振る舞うだけの健気な女性ではない。
この時代に、こういう女性がいたとしたら、『烈女』とか言われるのかも。
何だか気になって、「史記」と「項羽と劉邦」借りてみました。
どのような書かれ方をしているのでしょう。気になります。

レビュー投稿日
2015年2月11日
読了日
2015年2月4日
本棚登録日
2015年2月4日
11
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