想像ラジオ

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本棚登録 : 3357
レビュー : 521
nico314さん 小説   読み終わった 

震災で亡くなったと思われるDJアークが次の世界に行く前に、残してきた人たちへの想いや自分の現状について電波に乗せる。リスナーもまた、突然失われた自分の人生を思い出しながら、想像ラジオから流れてくるトークや音楽に想いを馳せるのだった・・・。

メディアで度々取り上げているのを見て、気になっていたけれどなんとなく回避していた。それでも、図書館の新着図書コーナーにそっと置かれていたところを通り過ぎることができなかった。

ところが、読み始めてもなかなか進んでいけない。
この本の予約を入れたというお仲間に、すぐに返却できそうにないと言ったところ、「いとうせいこう氏はどちらかというと純文学系ですから・・。単純でないのかもしれませんね・・。あせらずゆっくり読んでくださいね。」などとなぐさめてくれた。

全体のトーンはじわーっと哀しみが漂っている。そして温かい。
昨日まで連続していた日々が突然断ち切られ、それすら本人には確認できない。想像ラジオを通してリスナーたちが交流する中で自分たちの置かれている現状に気付く。愛する人や大切な人たちを残して自分だけがそこを去らねばならない理不尽さやいたたまれなさを受け入れるのは容易ではない。それでも、残していく人たちが幸せに生きていってくれることだけを願い、その兆しを確認できた時、現世とあの世の間にある緩衝地帯を越えていける。

これって、大切な人を失ったことのある人がその人を思い出すときそうやって徐々に高いところに昇って行ってほしいという願望なのか、それとも生きている自分がいずれそういう道をたどるのかもという想像なのか・・・?

たったひとりの人を失くしても、その喪失感は計り知れない。
震災で大勢の人を失い、自分の生活も壊滅状態に置かれた方々の気持ちはいかばかりか。また、それぞれの背負っているものによって、感じ方もずいぶん異なるのかもしれない。

せめて私たちは、想像しよう。
この世界を去らねばならない人と、残される人。
涙を流す人と、泣くことすらできない人。
未だ立ち上がることのできない人と、雲の切れ間から差し込む光に顔をあげる人。

そしていつか、皆が歩き始められる日が来ますように。
そのとき、失くした人との日々や共に生きる人がそっと背中を押せたらいいなぁと。

レビュー投稿日
2013年12月20日
読了日
2013年12月19日
本棚登録日
2013年12月20日
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